2014 Fiscal Year Research-status Report
高速・低電力を実現する多電源デジタル集積回路の設計技術開発
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26730029
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Research Institution | The University of Aizu |
Principal Investigator |
小平 行秀 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (00549298)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高速化 / 低消費電力化 / 一般同期方式 / 多電源集積回路設計 / レイアウト設計 / 集積回路設計自動化 |
Outline of Annual Research Achievements |
集積回路設計においては,要求される機能と性能を最小限の消費電力で満たすことが望まれる.クロックスキューを積極的に利用することで回路の高速化を図る一般同期方式と,複数の電源ネットと複数の電圧で電力を供給し,各CMOSゲートに適した電源ネットを個別に設定することで消費電力を下げる多電源設計手法を組み合わせることで,高速化と低消費電力化を実現できる. 本研究では,まず,一般同期方式において本質的な問題であるクロックスキュー値の設定法について検討を行った.設定可能なクロックスキュー値が2つに限定された場合に,高速にクロックスキュー値を設定する手法について新たな手法を提案した.提案手法は,2つのリテラルからなる充足可能性判定問題を解くことで,理論的に従来の手法よりも時間計算量が下がることを確認し,実験的にも記憶素子が1万個程度の規模の回路で最大で数千倍の高速化が実現されることを確認した. 次に,各CMOSゲートに適した電源ネットを個別に設定する手法に応用できるテクノロジーマッピング手法について検討を行った.指定された動作速度を実現することを制約として与え,可能な限り低消費電力の回路素子を各ゲートに割り当てるように整数計画法に定式化し,整数計画法のソルバを用いることでゲートに対する回路素子の割り当てを得た.ゲートレベルの計算機実験において,現実的な計算時間で最適な解が得られることを確認した.また,従来のデジタル集積回路と比較し,得られた回路の性能は,45%の高速化と16%の低消費電力化を実現することを確認した.提案手法により得られた回路は,50%から99%のゲートが高い消費電力の回路素子から低い消費電力の回路素子に変更されており,提案手法の有効性が確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般同期方式において本質的な問題であるクロックスキュー値の設定法について,短時間に最適解が得られる手法を開発した.これにより,記憶素子が1万個程度の規模の回路で,最大で数千倍の高速化が実現されることが確認され,大規模な回路に対して一般同期方式が適用可能であることを示し,実用性を証明した. また,各CMOSゲートに適した電源ネットを個別に設定する手法に応用できるテクノロジーマッピング手法では,ゲートレベルの計算機実験において,45%の高速化と16%の低消費電力化を同時に実現することを確認した.本研究の当初の目標は,15%の高速化と10%の低消費電力化を同時に満たすことであったので,性能自体は当初の目標を上回っており,有効性を証明した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で利用する,東京大学大規模集積システム設計教育研究センター(VDEC)から提供されているRohm0.18umのライブラリでは,多電源回路用のライブラリが提供されていないので,まずそのライブラリを作成する.次に,作成した多電源回路用のライブラリを用いて平成26年度に得られたテクノロジーマッピング手法を適用し,その後,レイアウト設計,および,チップ試作を行い,それらの性能を測定する.ゲートの割り当てを変更するテクノロジーマッピングでは,効果が小さい場合には,複数のゲートを1つにまとめて論理合成手法を提案することも検討し,再度チップ試作を行い,本研究の目標である15%の高速化と10%の低消費電力化を同時に満たすことを目指す.
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Causes of Carryover |
研究室に所属する学生の数が想定よりも減少したため,本研究課題を割り当てる学生を確保できず,謝金の支払いを行わなかったため,謝金として計上していた15万円分が残金となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,チップの試作を行う予定であるが,チップ試作代,計測機器の購入費,チップ試作・計測の研究補助に対する謝金等で使用する予定である.
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Research Products
(3 results)