2014 Fiscal Year Research-status Report
異種無線ネットワークを利用したマルチパス転送の省電力化に関する研究
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26730049
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋本 匡史 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (40711057)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 省電力 / 無線LAN / トランスポート層プロトコル / 異種無線ネットワーク / マルチパス転送 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度では,実無線LAN環境において,省電力パケット転送方式(以降,提案方式と呼ぶ)の実験評価および通信品質に関して提案方式の改良を実施した.提案方式は,無線端末と無線LANアクセスポイントとの間のパケット通信を集約し,間欠的にパケット転送することによってスリープ可能なアイドル時間を増やし省電力なパケット転送を実現する.提案方式は,メディアアクセス制御レベルの省電力モードと組み合わせることで,データ通信時の省電力を実現する. 実験評価において,提案方式は,通常のパケット通信と比べて,わずかにパケット転送遅延が増加するものの消費電力を20%から60%削減できることを明らかにした.さらに,標準で利用されている無線LANの省電力モードと比べて,パケット転送遅延を大きく低減しながら,提案方式は標準の省電力モード程度の省電力効果を実現できた.しかしながら,音声通信やビデオ会議などの個々のパケット転送遅延が通信品質に大きく影響するアプリケーションに対しては,特にアプリケーションからの通信量が少ない場合には,提案方式によって通信品質が劣化することがわかった. そこで,この問題に対処するために,通信のリアルタイム性が要求するアプリケーションに対する省電力パケット転送方式を提案した.提案方式は,アプリケーションから要求された遅延制約を満たしながら,上述の省電力なパケット転送方式を実現する.実無線LAN環境を用いた実験評価の結果,アプリケーションによって与えられた遅延要求を満たしながら省電力なパケット転送ができることを明らかにした.特に,遅延要求の異なるアプリケーションが混在している場合においても,要求遅延を満たしながら省電力できることを示した. 以上の研究成果は,国内研究会および国際会議において研究発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度においては,省電力パケット転送方式の実無線LAN環境による実験評価に加えて,異種無線ネットワークにおける省電力マルチパス転送に向けて,LTEやWiMAXなどの無線ネットワークの電力特性の調査を実施する予定であった.しかし平成26年度においては,1つ目は実施し一定の成果があったものの,2つ目に関しては実施できなかった.これは,1つ目の実験評価において使用した実験機器の不具合により,当初予定していた期間より大幅にずれたため,平成26年度内に無線ネットワークの電力特性の調査が実施できなかったためである.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては,まず,平成26年度に実施できなかった異種無線ネットワークの電力特性の調査を実施し,異種無線ネットワークにおいて,消費電力と通信性能を評価する指標を構築する.具体的には,LTEやWiMAXなどの無線ネットワークにおいて,パケット廃棄率やパケット転送量,エンド端末間遅延など容易に計測できるパラメータによる電力特性を明らかにし,その特性に応じた消費電力・通信性能の評価モデルを構築する. さらに平成27年度においては,構築した評価モデルを用いて,ユーザやアプリケーションからの要求に応じて,特性の異なる複数の無線ネットワークにおいて省電力なマルチパス転送を行う方式を確立する.コンピュータシミュレーションによって,提案方式の有効性を評価し,省電力効果および通信品質の観点を中心に様々なトラヒックが混在するような状況において提案手法の有効性を示す. 以上の研究によって得られた成果を論文にまとめ,国内研究会および国際会議において研究発表を行い,学術論文誌に投稿する.
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Causes of Carryover |
当初予定していた異種無線ネットワークの電力特性の調査が平成26年度期間内に実施できなかったため,無線接続機器などの,特性調査に必要な物品の購入を行わなかったため未使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度において,プリペイド型の無線接続機器(3GやLTEなど)を購入し,平成27年度に予定している研究計画と合わせて異種無線ネットワークの電力特性の調査を行う.
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