2014 Fiscal Year Research-status Report
地図メタファーを用いた高次元データ可視化手法の研究
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26730061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
ウー シャンユン 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 特任助教 (00706749)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 視覚メタファー / 高次元データ / 地図可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビックデータの効果的な解析の重要が高まっている現代において,高次元データのわかりやすい可視化技法の定式化は,非常に重要な技術的課題となってきている.しかしながら,現状の高次元データ可視化手法は,視覚メタファーと呼ばれる視覚的な比喩表現が,単純な点や線などのパタンであることが多いため,可視化画像の理解に一種の慣れが必要となっていた.そこで本研究では,我々が日常で慣れ親しんでいる地図を視覚メタファーを用いた高次元データ可視化手法を構築を目的とする.具体的には,高次元データを,その極値と接続性を参照して地形データに変換するアルゴリズムを考案するとともに,古地図で用いられる視認性の高い構図に基づく地形データ描画手法の実現を図る. 本研究では,(1)数値データを地形データに変換するアルゴリズムの構築,(2)わかりやすい構図や注釈配置による地図表現の可読性の向上,(3)ユーザの好みや興味の対象によるカスタマイズの機構の導入の3つの課題を,3年間の研究期間において取り組んでいく.まず最初に,課題(1)と課題(2),つまり高次元数値データから地形データへの変換及び可読性の高い地図画像表現の生成までの一連の可視化処理について,手法の定式化を図る.平成26年度は,基本的に課題(1)と課題(2)に並行に取り組んだ.この2つの課題においては,(1A)高次元空間におけるデータサンプル点の多様体構造を表す近接グラフの構築とその可視化の評価を行った.同時に(2B)地理形状の特徴部分の配置に関する制約とルールに関する調査を実施し,さらに(2C)注釈ラベルの配置を考慮に入れたレイアウト最適化の定式化への拡張についても検証を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度は, 課題(1)と課題(2)に並行に取り組んできた.まず,課題(1)に関して,高次元空間におけるデータサンプル点の多様体構造を表す近接グラフを構築し,その効果を視覚的に検証した.具体的には,データの全体的な特徴を把握する際に用いられるk-平均法を,サンプル点集合が構築する多様体接続性を考慮に入れるかたちに拡張を行った.本研究では,サンプル点集合に対して近接グラフを構築して,その測地線距離を考慮した測地的k-平均クラスタリング法を導入して,従来の結果とより点集合の分布を反映した手法の結果を可視化画像の比較により検証した.それと同時に,課題(2)として,わかりやすい地理形状の特徴部分の構図や注釈配置による表現の可読性についても調査を行った.従来の構図の定式化に対して,空間的に近い要素や視覚的に似ている要素をグループ化しようとする,ゲシュタルトの法則という心理学を導入し,次元地図画像の対称性顕著性マップを作成,地図画像に潜む対称性を抽出することで,抽出結果が示す地理的な意味を調べた.さらに,地図領域の特徴分布を制御する手法の基礎として,グラフレイアウト手法として広く用いられているバネモデルに,空間分割を行うためのボロノイ図を組み合わせ,ラベルを貼るための空間をより明確に確保する手法の構築にも着手した.これにより,地図を特徴領域に分割した後,その適切な変形を制御して,人が手で描くような地図レイアウトを生成する下地を準備することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27 年度以降は,まず (1B)近接グラフからの等高線の分岐・併合を表すcontour tree への変換,さらに(1C)contour tree を参照した地形データの生成に取り組む,課題(1)の3つのステップを完成する.これと同時に,課題(2)についても取り組んでいく.ここでは,地理形状を描く際の構図生成規則に関する調査から得られた知見を,(2A)従来の構図の定式化を用いた古地図表現のモデル化や,地理形状の特徴部分の配置に関する制約に基づく地図レイアウトの最適化に融合し,さらに(2C)注釈ラベル配置手法についても新たにアルゴリズムを考案し,全体のレイアウト最適化問題として定式化していく.最後に,課題(3)に取り組む.ここでは,(3A)高次元データが埋め込まれている空間における変数選択によるカスタマイズの機構と(3B)ユーザによる興味領域の指定に応じた地図レイアウトのカスタマイズの機構の導入が含まれる.最後に,構築した高次元データの地図メタファーを用いた可視化手法の効果を,注視点計測装置を用いた実験などを通して評価を行い,検証作業を通して手法のさらなる改善及び微調整を図っていく.
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Causes of Carryover |
本研究においては,まず手法の構築の基礎となる地図関係の資料収集及び分析を前倒しで対応し,実際の計算処理については次年度以降に対応する計画として.実際,高次元ビッグデータの解析には,高性能の計算機器を導入する必要がある.初年度は必要な計算機環境の予算を若干絞り,次年度以降にその当時の標準的な性能を持つ計算機を導入することで,研究期間終了まで十分稼働するシステムを導入することとした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度以降にはデモンストレーションと評価実験のために,データ可視化クライアント用計算装置が追加で必要となり,設備備品費として予算を確保している.消耗品費として,データ整理のためのソフトウェア,地形形状数値地図データ,タブレットや周辺装置を含めた高速入出力デバイス,USB メモリなどの記録メディア,関連書籍の購入を計画している.国内旅費は,理化学研究所計算科学研究機構の可視化技術研究チームとの高次元データに関する知見を得るための研究打ち合わせや成果発表のため.外国旅費は,ビッグデータ可視化の国際会議IEEE BDVAに出席,さらに可視化分野国際会議の最高峰であるIEEE Vis に出席及び成果発表するための費用として計上している.加えて,データの収集整理,さらには評価実験の補助を依頼する方に支払う人件費,さらには国内外の会議に出席する登録費や,導入した機器の保守費として計算に含めている.
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