2014 Fiscal Year Research-status Report
クラウドサービスに適した階層型計算委託に関する研究
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26730068
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松田 隆宏 独立行政法人産業技術総合研究所, セキュアシステム研究部門, 研究員 (60709492)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 暗号技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、クラウドサービスに適した柔軟かつ安全に「計算の委託」を行うことができる階層型検証可能委託プロトコルについて、その安全性定義、構成可能性(及び不可能性)についての検討、及び(構成が可能ならば)効率的な構成を行うことを目標としている。本年度は、検証可能計算委託プロトコルについての文献調査及び、階層型検証可能計算委託プロトコルについての安全性定義について検討を行った他、検証可能な委託をする計算の特殊なケースとして「代理人再暗号化方式」について着目して研究に取り組み、成果を挙げた。
代理人再暗号化方式とは、あるユーザA宛の暗号文を、Aが委託を許した「代理人」が、別のユーザBが復号できる暗号文へと変換(再暗号化)できる技術である。しかも再暗号化のプロセスにおいて、代理人に平文の情報は洩れない、という性質を持つ、計算の委託の具体的な例と言える。この暗号要素技術は、クラウドストレージにおいて、暗号化したままでの他のユーザとのファイル共有などに利用できる。代理人再暗号化方式では通常、代理人が再暗号化の手続きを正しく行ったかどうかを、再暗号化された暗号文の受信者が検証できることは保証されていない。そこで本研究では、受信者が再暗号化前後の暗号文を基に、代理人によって再暗号化手続きが正しく行われたかどうかを検証することができる方式を、その定義も含め、初めて示した。この成果は、暗号技術・理論において権威ある国際会議CT-RSA 2015(査読有)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、クラウドサービスに適した柔軟な検証委託を可能とする階層型の検証可能計算委託について、安全性の機能要件・定式化を試みる、というのが目標であった。現在のところ、汎用的な計算を取り扱うことができる安全性の定式化の検討段階であるものの、今後の研究のための下地となる定式化につながっているという感触を得ている。また、具体的な計算の例として暗号文の再暗号化に特化した方式についての成果が、権威ある国際会議CT-RSAに採録されるなど、既に具体的な成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画に沿って、引き続き現在得られている安全性の要件の検討・定式化、及び具体的な方式の構成を進める。ただし、検証可能計算委託の研究は、現在進行形で多くの研究者が取り組むホットトピックであり、研究分野の進展が非常に速く、さらに、柔軟な計算を扱うことができる方式の定式化・構成には非常に慎重を要する。例えば、つい最近にも、情報セキュリティのトップ国際会議であるUSENIX Security 2014で発表された検証可能計算委託に関する論文の安全性証明に誤りがあることが指摘され、この方式を基礎とした論文全てに大きく影響を与えることになってしまっている。この様な不幸な事態を未然に防ぐためにも、安全性定義には慎重に取り組む。また、研究計画に書いた通り、検証可能計算委託プロトコルは、計算複雑性理論などと密接に関わっており、あまりに柔軟な機能を満たす計算委託は、その分野で知られている何らかの理論的な不可能性に抵触する可能性があるため、その可能性も視野に入れつつ研究に取り組む他、一般の汎用的な計算を対象とすることに困難性が見いだされる場合、計算の種類を限定した計算の委託方式について取り組むことも引き続き行う。
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Causes of Carryover |
情報収集・研究発表のために本科研費を使用して参加を計画していた国内・国際会議参加の旅費及び参加登録費を、研究代表者の所属機関の内部予算から充てることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
情報収集・研究発表を目的とした国内・国際会議への参加のための旅費及び参加登録費。
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Research Products
(2 results)