2014 Fiscal Year Research-status Report
イメージ形成時に視覚入力を抑制するcloserの行動および生理指標の提案
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26730070
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
廣瀬 健司 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (30706768)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イメージ / 鮮明度 / Closer / 明るさ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,実験参加者に輝度の高い,あるいは低い刺激を観察させながら心的視覚イメージを形成させ,その際の脳活動を測定する必要がある。 イメージ対象を指示する手がかり刺激として,先行知見の英単語の訳語を使用することはできなかった。なぜなら,使用された英単語の特性と,その訳語の特性は異なることが考えられたためである。そこで前年度は,まず,先行知見で使用された単語と同等の性質を持つ単語を,天野・近藤 (2005) 「日本語の語彙特性 第3期」と,天野・近藤 (2005) 「日本語の語彙特性 第2期」にもとづき選出し,使用する刺激のデータベースを作成した。具体的には,モーラ数とイメージ価,および頻度の平均が,先行知見で使用された単語とほぼ等しくなるように単語を選出した。 次に,それを用いて,イメージ形成時にどのような明るさの刺激を注視させれば,イメージの鮮明さに変化が生じるかを調べる行動実験を行なった。具体的には,実験参加者を2群に分け,一方の群には,イメージ形成時,相対的に輝度の高い無彩色刺激を観察させ,他方の群には,相対的に輝度の低い刺激を観察させた。その結果,イメージの鮮明度には,群間に統計的に有意な差異は検出されなかった。しかし,別の課題として,イメージを形成させながら,観察する刺激の輝度を,イメージするのに適した明るさに変化させたところ,相対的に輝度の高い刺激を観察した参加者群は,統計的に有意に輝度を低くしていた。輝度の低い刺激を観察した群では,そのような結果は得られなかった。これらの結果は,観察した刺激の輝度はイメージに影響を与えていたものの,なんらかの原因によってそれが鮮明度の差異としては検出されなかったことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は,前述のとおり,行動実験とMRI実験に必要となる,イメージ対象を指示する手がかり刺激のデータベースを作成した。ただ,それを用いた行動実験では,イメージの鮮明度について予想通りの結果が得られなかったため,予定していたMRI機器を用いた実験を開始することはできなかった。 ただし,その間も,MRI機器を使用するための技術について習得を進めてきた。また,MRI機器を使用した他の研究者の実験を参加者として体験し,あるいはそのような実験を見学することで,MRI機器だけでなく,刺激提示・制御装置の使用方法や,実験を実施するにあたっての留意事項を確認するなどし,脳活動を測定するMRI実験の実施準備をほぼ終えつつある。また,後述のとおり,行動実験で予想通りの結果が得られなかった原因も特定できており,その実験の追試実験は5月上旬から開始できるため,現在の研究実施の遅れは速やかに取り戻すことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究計画を述べる。申請者の所属する機関では,実験参加者プールを作成している。これが完成するのが5月上旬である。そこで,4月~5月上旬は,MRI機器を実際に使用した実験の予行演習を行う。5月中旬~6月下旬には,そのプールで参加者を募り,上述の,イメージ形成時に観察する刺激の輝度と,イメージの鮮明度との関連を調べた行動実験の追試を行なう。前年度の実験で得られた,イメージ形成時に観察する刺激の輝度によっては,イメージの鮮明さに違いは生じないという結果は,先行知見と同様にイメージの形成時間を任意としたことが原因だと考えられた。そこで,実験で参加者に観察させる刺激の輝度はそのままに,イメージの形成時間に制限を設けた実験を行う。 7月以降は,研究計画のとおり,MRI機器を用いた実験を実施し,その参加者に,別の行動実験にも参加してもらう。この実験は連続した5日間を必要とし,1日あたりの所要時間は1.5~2時間である。MRI機器は,他の研究科と共同で使用するため,一週間のうち,使用できるのは5時間程度である可能性が高い。5時間では最大で2人の参加者についてMRI実験を実施できる。そうすると,1週間に1~2人の参加者について,両方の実験を終えることができる。24名の実験を終えるには,24~12週が必要となる。大学の閑散期(8・9月,翌年3月)は,参加者を集めづらいことが予想されるが,7月,10~12月,1~2月の6ヶ月間で,全ての実験を終了させる予定である。
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Causes of Carryover |
本研究では,MRI機器を用いて脳の生理的活動を測定する実験を行なう予定であるが,それに先立ち,その実験の課題で提示する刺激の,適切な輝度を特定する必要があった。そこで,上述のとおり,まず行動実験を実施し,MRI機器を用いた実験に適した結果が得られるかどうかを検証した。しかし,前年度中にはパラメータの特定には至らなかったため,平成26年度中にMRI機器を用いた実験を開始できず,したがって機器利用料の支払いが無かった。同時に,その実験の参加者に支払うべき謝礼の支出も無かった。この結果,次年度の使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
MRI機器の利用料は,一日のうち連続5時間を1単位として3万円である。この1単位あたり,最大で2人,実験を行なうことができる。24名の参加者を予定しているので,12単位分,36万円が必要になる。ただし,使用する刺激の輝度をMRI機器のある施設で測定することや,MRI機器を実際に使用した実験の予行演習が必要になることから,さらに3単位分は必要となる。また,必ずしも1単位5時間に連続して参加者が見つけられるとは限らず,予算に余裕を見ておく必要がある。そこで,6単位分の利用料が追加で必要になるものと想定する。よって,利用料の予算は63万円となる。これに加え,MRI機器を用いた実験の慣例にしたがえば,参加者への謝礼として,一人あたり3000円,計72000円が必要となる。以上は,参加者24名で予想通りの結果が得られた場合の計画であるから,これよりも若干多くの予算が必要となることも考えられる。
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