流体力学による人物流解析に基づく混雑環境下人物追跡

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 26730096
• Research Institution: Tokyo University of Science
• Principal Investigator: 杉村 大輔 東京理科大学, 工学部, 助教 (10712052)
• Project Period (FY): 2014-04-01 – 2017-03-31
• Keywords: 画像認識 / 流体力学 / 数値解析

Outline of Annual Research Achievements

本研究では，混雑環境下での人物群の行動解析を目的としている．具体的には，人物群が形成する動きの流れを，流体力学の考え方に基づき解析することで，新たな人物追跡手法を創出することである．
平成27年度の研究実施計画では，前年度における検討を踏まえ，流体力学の知見による人物群の動きの流れのモデル化についての検討・人物追跡への応用としていた．このような研究計画に基づき，以下のような検討を行った．
前年度に引き続き，流れ場を表現するための数値計算に関する知識の習得，シミュレーションについて調査，検証を行った．数値計算のための初期条件，境界条件の設定が不適切である場合，数値計算に失敗することを理解することができた．
また，流れ場を効率的に表現するための方法（スタッガード格子による表現）を検討した結果，より数値解析の理解が深まったと考える．
前年度では，映像中のどこに群集による流れがあるかを推定するために，映像中のシーン解析を行った．本年度では，この結果をもとに，対象領域（群集の動き領域）に対して流れ場の数値計算手法の適用を試みた．
前年度において良好な結果が得られなかった理由として，境界条件の適切な設定がなされていなかったと考える．そこで，最初に流れ場の運動方程式に基づき，境界条件の推定を行った．推定された境界条件のもと，数値計算を適用した結果，定性的に正しいであろう結果を確認することができた．そして，いくつかの単純な群集の動きのモデル化ができることを確認することができた．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

平成27年度の研究実施計画では，前年度における検討を踏まえ，流体力学の知見による人物群の動きにより形成される流れ場のモデル化についての検討・人物追跡への応用としていた．
平成27年度以降に検討予定であった混雑映像からの対象領域推定を前年度に行ったことにより，本年度では，平成26年度に十分に取り組むことができなかった，数値解析法の実動画への適用・検討を円滑に行うことができた．その結果，上述したように，単純な群集の動きについてモデル化できることを確認することができた．
しかしながら，複雑な動きを示す実動画での検証，ならびに人物追跡への応用については，十分な検討を行うことができなかった．主な理由として，流体力学の数値解析手法についての習得が不十分であったことが考えられる．前年度までのシミュレーション法により基本的な流れ場の解析をいくつか行った際，うまく動作しないケースがあった．このような問題解決のための知識の習得や検証に多くの時間を要してしまった．
以上のような理由から，平成27年度の実施計画に比べ少々遅れた状況にある．平成28年度では，検討している方式の有効性を検証・確認し，研究成果をまとめるために注力していく．

Strategy for Future Research Activity

来年度は，より複雑な群集の動きについて，検討している方法が適用可能であるか慎重に確認する．また，流れ場の振る舞いを支配するレイノルズ数と呼ばれる無次元パラメータがある．このパラメータを自動的に推定することが重要であると考える．そこで，いくつかの学習データを用意し，パラメータを自動推定する方式についても検討する．その後，研究実施計画に基づき，人物追跡への応用に関する検討を行っていく予定である．

またこれと同時に，当該分野で著名な国際会議であるICCV，CVPR等に発表される関連研究の調査を行い，自身の研究の新規性が十分であるか確認し，研究の立ち位置をより明確にしていく．

Causes of Carryover

次年度への繰越金がある理由として，流体力学の基礎理論，ならびに数値計算手法の習得に時間がかかったことや，通常業務の都合等により，情報収集のための著明な国際会議への積極的な参加を行うことができなかったことが挙げられる．そのため，旅費として計上した予算を十分に消費することができなかったことが理由であると考える．

Expenditure Plan for Carryover Budget

次年度では，自身の予定を調整し，情報収集を積極的に行う．これに加え，研究成果をまとめ，積極的に国際会議への参加を行う予定である．