2016 Fiscal Year Research-status Report
マルチエージェント自動交渉モデルにおける効用抽出および論点構造化手法の確立
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26730116
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
藤田 桂英 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00625676)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自動交渉 / マルチエージェントシステム / 合意形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではマルチエージェントシステムに基づいた自動交渉に関連して,(1) 交渉論点の依存関係の構造化および対応する自動抽出手法の開発, (2) 交渉参加者の選好情報を効率的に自動取得する手法の開発,(3) (1)と(2)に基づいた効率的な自動交渉手法の開発を実施する.既存のマルチエージェントにおける自動交渉機構研究は論点がそれぞれ独立であると仮定されており,現実的な問題設定ではなかった.一方,現実世界はWebの発展により大規模な合意形成の必要性が高まっている.本研究により,現実世界に近い設定である論点間に依存関係がある交渉問題を対象とする.これらの研究成果は現実の交渉事例を分析および評価に使用することで,現実世界の合意形成支援に貢献できると考えられる. 本年度は,階層分析法(AHP)に着想を得ることで,適切に対戦相手の効用値を予測し,効率的な合意案候補の提案を行う手法を提案した.提案した交渉戦略と最先端の交渉エージェントとの対戦の結果,社会的余剰の高い合意を達成できていることが示された. さらに,交渉問題における論点数や,交渉に参加するステークホルダーの人数が膨大で,論点間に依存関係がある交渉問題でも合意案を発見できる自動交渉プロトコルを提案した.提案手法では,各エージェントの依存関係グラフをもとにクラスタ分析によりデンドログラムを作成する.その後,各エージェントは入札を行い,メディエータは入札情報をもとに組み合わせ最適解を求める.この時,組み合わせが存在せず合意案が得られなかった場合,デンドログラムをもとに交渉問題をさらに分割し,分割された交渉問題ごとに再び入札を行う.シミュレーション実験により,提案手法が既存の手法では合意案を発見できなかった論点数100までの交渉問題に対して,最適な合意案を発見できていることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
参加者同士の効用情報が非公開の状態で交渉を行う多者間複数論点交渉問題に対して有効な階層分析法(AHP)に着想を得た交渉戦略と相手の効用情報の推定手法を提案した.提案手法では,論点内の各選択肢について相手からの提案Bidの出現数を数え上げ,重要度の決定および幾何平均の計算によって交渉相手の効用関数の予測を行う.さらに,階層分析法に着想を得た手法による自動交渉戦略を開発し,効率的なBid提案を行うことができる.最終的に、提案した交渉戦略と最先端の交渉エージェントとの対戦の結果,社会的余剰の高い合意を達成できていることが示した. 自動交渉を現実世界に適用させるために,交渉問題における論点数や,交渉に参加するステークホルダーの人数が膨大で,論点間に依存関係がある交渉問題でも合意案を発見できる自動交渉プロトコルが重要である.提案手法では,まず,各エージェントが制約情報に基づき論点の依存関係グラフを作成する.次に,メディエータは各エージェントの依存関係グラフをもとにクラスタ分析によりデンドログラムを作成する.その後,各エージェントは入札を行い,メディエータは入札情報をもとに組み合わせ最適解を求める.この時,組み合わせが存在せず合意案が得られなかった場合,デンドログラムをもとに交渉問題をさらに分割し,分割された交渉問題ごとに再び入札を行う.また,交渉問題分割後の効用の分割時において,交渉途中においてすでに発見されている部分合意を考慮することで,さらに最適率の高い合意案を発見できる.シミュレーション実験により,提案手法が既存の手法では合意案を発見できなかった論点数100までの交渉問題に対して,最適な合意案を発見できていることを示した. 以上から、本年度に目標としていた効率的な自動交渉手法の開発に関しておおむね達成できたと判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き論点構造に基づいた効率的な交渉手法の提案および改善を行うとともに,実世界のデータセットに基づいた評価と検証を行う.テストベッド作成のための交渉事例は研究協力機関から提供される.評価,検証するための共通テストベッド作成のためには,どのような指標が自動交渉プロトコルを分類するのに有効かを評価する必要がある.そこで,すでにマサチューセッツ工科大学で進行しているNego Wiki プロジェクトや国際自動交渉エージェント競技会(ANAC)と協調し,交渉事例の収集およびマッチングシステムの開発を進めて行く.当該年度に実施したスケーラブルな自動交渉手法や階層分析法(AHP)に着想を得た交渉戦略および,評価,検証のためのテストベッドの作成を推進する.また、JST CRESTの「エージェント技術に基づく大規模合意形成支援システムの創成」の社会実験に今回の提案手法を実装したものを大規模合意形成支援システムに導入することで,シミュレーションに依らないより現実的な交渉問題に対して,提案手法の有効性を評価する.
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Causes of Carryover |
平成28年度に,論点構造に基づいた効率的な交渉手法の提案および評価および検証のためのテストベッドの作成を行い,その成果を基に大規模なシミュレーション実験を行うとともに国際会議および学術論文誌において発表する予定であった.しかし,これまでに提案したアルゴリズムの事前評価の結果が予想より低い性能であり,計画を変更しさらに自動交渉手法の改善を行うこととしたため,旅費および評価実験装置購入分の未使用額が生じた.さらに,予備評価実験の結果から追加実験の実施やそれらの成果による学会参加や論文投稿が平成29年度に見込まれるため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの,予備評価実験の結果から追加実験の実施やそれらの成果による学会参加や論文投稿が次年度に見込まれる.特に,次年度は,大規模シミュレーション実験と追加実験の成果による国際会議や学術論文誌への発表を中心となるため,これまでの繰越額はその経費に充てる. 自動交渉機構の構築および交渉事例の解析のために,高性能計算機とディスプレイを購入する.ノートパソコンを研究結果の対外発表やデモのために購入する.さらに,旅費に関して,国内学会と国際学会において,それぞれ数回の発表を予定している.本年度は国内外に在籍している研究協力者との打ち合わせが当初の予定回数行うことができなかったため,打ち合わせのための旅費に活用する.研究を仕上げるために,打ち合わせおよび対外発表を多く行う予定である.人件費を英文翻訳および自動交渉機構開発の技術補佐員雇用のために活用する.
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