2015 Fiscal Year Research-status Report
全人工膝関節置換術を施した被介護者のための暗黙知を用いた歩行リハビリ度評価法
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26730118
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
牧野 浩二 山梨大学, 総合研究部, 助教 (60560159)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 暗黙知 / リハビリテーション / 診断システム / 自己組織化マップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,全人工膝関節置換術を施した被介護者のリハビリ度を測る理学療法士の暗黙知を形式知化することと、これを用いたリハビリ度診断システムを開発することを目的とする。本年度は、被介護者の歩容計測の容易化と、足裏の重心動揺のSOMによる分類結果とリハビリ度との関連性の検討の2点を行った。 まず、ハイスピードカメラの変更を行い、設置位置と計測精度の関係を調べるとともに、LEDによる光るマーカを作成した。これにより、計測機器の設置にかかる時間とデータの解析にかかる時間の削減を実現した。 次に、SOMとリハビリ度の関係性に関しては、重心動揺の良し悪しを理学療法士に採点していただき、分類結果との対応を調べた。その結果、SOMは、歩容が良い領域と悪い領域がシームレスに分類されることが確認できた。また、退院時までの分類結果を時系列で調べたところ、歩容が悪い領域から良い領域へ改善する結果だけでなく、歩容の悪い領域にとどまる結果が得られた。この結果と歩容評価のために医師とともに開発した5項目評価法と対応させた結果、評価の低かった被介護者はSOM分類上でも歩容の改善が見られないことが分かった。例えば、術後も術前と変わらずつま先のけりだしがない被介護者を例に挙げると、5項目評価も術前と術後で大きな変化はなかった。このことから、その被介護者にはつま先のけりだしを行うように指示することでリハビリ度が向上する可能性があることが分かった。この例のような、分類結果から、理学療法士が暗黙知として持つ効果があると推測される指示が得られる可能性のある結果がいくつか見られた。以上から、SOMによる診断システムから理学療法士の暗黙知の一端を導ける可能性を示すことができた。 最後に、新たな知見として自動膝伸展不全が歩容に与える影響が大きいことがわかり、その改善とリハビリ度の関係性について調べるための機器開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず,リハビリ度を計測する機器の開発はおおむね順調に進んだ。この成果は2点ある。1つは従来有線で計測していた重心動揺を無線化することで、被介護者の転倒リスクを大幅に減らすとともに、計測者が被介護者の後ろからついて歩く負担も削減できた。もう1つはハイスピードカメラの設置位置にかかる時間と解析にかかる時間を削減し計測の容易化を実現した。 次に、計測の分類と暗黙知の抽出に関してもおおむね順調に進んだ。この成果の1つは、SOM上の各エリアには特徴的な歩容パターンが現れることを示した点である。また、SOMの分類結果からリハビリ度向上のために効果的な指示が与えられる可能性があることが分かった。この指示は理学療法士の暗黙知の一端である可能性が高く、その解明へ貢献できるシステムとなった。しかしながら、分類結果の評価は定性的であり、容易に解釈できる表示方法の開発は不十分であった。 最後に、当初の計画以上の成果として、自動膝伸展不全とリハビリ度の関連性に関して新たな知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られたデータを精査し、理学療法士の暗黙知に関わる知見を得ることを行う。そして、最後に得られた自動膝伸展不全とリハビリ度の関連性に関して、データ数を増やしてこれまでとは異なる観点からも暗黙知の解明へアプローチする。そしてさらに、計測情報からリハビリ度が自動的に算出されるシステムの作成を医師や理学療法士らの使い勝手を含めて作成を行う。
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Causes of Carryover |
歩行分類により、歩行リハビリ度評価といくつかの暗黙知の抽出ができた。臨床試験を重ねた結果、自動膝伸展不全の歩行リハビリ度への影響が明らかとなった。急きょ、改良した装着型ロボットでリハビリテーションを行い、歩容改善の原因がはっきりした有用な事例を得た。その結果と歩行リハビリ度の関連性を27年度中にまとめて、7月6日から8日にイギリス、ポーツマスで開催される国際学会(HSI2016)への論文投稿を行った。その国際学会への参加によって発表するため延長を申請し、承諾を得ている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際会議(HSI2016)への参加のための参加費および旅費として使用を計画している。
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