2014 Fiscal Year Research-status Report
空気を読む脳内機構の解明による脳型状況把握モデルの構築
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26730124
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
船水 章大 沖縄科学技術大学院大学, 神経計算ユニット, 研究員 (20724397)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 皮質 / ベイズ推定 / 二光子顕微鏡 / 頭頂葉 / 強化学習 / 神経科学 / 脳科学 / 計算論 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳新皮質のベイジアンフィルタ仮説を提案し,総説として発表した [船水章大,銅谷賢治,「予測-大脳新皮質のベイジアンフィルタ仮説」,生体の科学,No. 66, Vol. 1, pp.33-37, 2015].この総説は,大脳新皮質の解剖学・生理学的知見に基づいて,階層型コラム構造が,ベイジアンフィルタを実装する仕組みを提案した.具体的には,皮質1層・2/3層・5層がそれぞれ,ベイズ推定の事前予測・尤度・事後予測を表現する.また,先行研究とは異なり,ベイジアンフィルタで必須な状態遷移の皮質実装を提案した.状態遷移は,高次領野からのトップダウン信号や,各領野内での水平結合で実装される.この仮説を,感覚野・頭頂連合野に適応すると,状況把握・空気を読む脳内機構のベイズ仮説になる.また,ベイズ推定と運動最適制御は双対性がある.同仮説は,運動野の仮説としても機能する.総説ではあるが,新規の仮説を提案できた. 本研究の最大の特色は,上述の仮説提案だけでなく,マウスの動物実験で,同仮説を検証・修正できる点である.まず,8匹のマウスで,状況把握の音源定位課題を実施した.同課題で,マウスは,仮想環境上の音源に到達すると,報酬の水を得た.同課題では,音刺激を常にマウスに提示する感覚情報試行と,音刺激を断続的に提示する状況推定試行の,2種類の試行を用いた. 蛍光カルシウムプローブのGCamp6fを発現したアデノ随伴ウイルスを,マウスの後部頭頂葉に打ち込み,課題中のマウスの皮質1-5層の神経活動を,二光子顕微鏡法で計測した.本研究では現在,皮質2,3,5層の神経細胞の活動を解析中である.これまでの解析結果は,国内外の学会で発表した.今後,ベイジアンフィルタ仮説と各皮質の神経活動を比べ,同仮説の検証・修正を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大脳新皮質のベイジアンフィルタ仮説を提案し,総説として発表できた.同仮説の検証・修正で必要な動物実験 (マウスの音源定位課題) を実施し,頭頂葉の皮質各層から,神経活動を計測できた.これまでの神経活動の解析結果は,国内外の学会で発表できた.次年度は,計測した神経活動を解析し,ベイジアンフィルタ仮説との関係を掴むだけで,本研究の目的を達成できる.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,マウスの頭頂葉で計測した皮質1-5層の神経活動を解析する.特に,皮質1層の解析を中心に行う.同解析で,神経活動とベイジアンフィルタ仮説との関係を掴む.得られた成果を,国内外の学会で発表し,国際的な学術雑誌に投稿する.
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Causes of Carryover |
大脳新皮質のベイジアンフィルタ仮説を提案しただけでなく,総説として発表するための論文執筆を行った.この理論研究 (パソコンでの研究) に時間がかかったため. 申請時に比べて,費用は減額されている.翌年度に,申請書に記載した通りの計画を実施するためには,繰り越す必要があった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に,申請書に記載した通りの計画を実施する.具体的には,追加の動物実験に必要な機器・薬品・実験動物・ガラス機器等を購入する.また,論文校正も行う予定である. 必要に応じて,データ保存のためのA/Dコンバータや,データ解析のためのパソコンを購入する.
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Research Products
(4 results)