2014 Fiscal Year Research-status Report
閉凸集合族の和集合上の最適化問題と信号処理工学への応用
Project/Area Number |
26730128
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山岸 昌夫 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (30638870)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 信号処理工学 / 最適化工学 / 音響エコーキャンセラ / パラメータ選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
「有限個の線分の和集合上において凸関数を最小化する問題」の解法を明らかにし,以下二つの工学的な問題の解決策を提案した.
1.(適応フィルタのパラメータ選択)未知システムの同定手法として,適応フィルタが広く用いられている.適応フィルタの学習則の設計において,未知システムに関する事前知識を活用することで,適応フィルタの同定性能を向上できる.特に,事前知識としてフィルタのスパース性(係数のほとんどが0である性質)が広く活用されている.結果として,多くの学習則において「スパース性の活用度合い」を決定するパラメータが現れるため.パラメータ選択の指針が必要となる.本研究では,スパース性を活用する適応フィルタとして「適応近接勾配法」に着目し,「スパース性の活用度合い」を決定するパラメータを選択するための最適化基準をMSEの統計的推定により構成している.また,この最適化問題が「有限個の線分の和集合上において凸関数を最小化する問題」であり,効率的に求解できることを明らかにしている.
2.(非線形音響エコーキャンセラの学習)携帯電話などで通話を行っているとき,自分の発話が,相手の携帯電話のスピーカとマイクを通して,自分の携帯電話のスピーカーから聞こえる「音響エコー」が生じる.これは通話の妨げとなるため,「音響エコーキャンセラ(発話音声から音響エコーを予測し除去する技術)」が必要とされている.音響エコーキャンセラの実現には.スピーカの非線形特性を学習する手法が必要不可欠である.本研究では,この学習問題が「有限個の線分の和集合上において凸関数を最小化する問題」として定式化できることを明らかにし,その解法を用いて,高速かつ安定して収束する学習則を提案している.これにより,既存の学習則が抱えていた弱点の一つ「局所最適解において学習が停滞する性質」を解決している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通りに進展している.また,上述した成果はIEEEの国際会議にて発表済みである.
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Strategy for Future Research Activity |
上述のパラメータ選択に関する結果を一般化する.フィルタ係数に関する複数の事前知識(スパース性や滑らかさなど)を同時に活用するためには,多くのパラメータを適切に選択する必要が生じる.そのため,パラメータを自動で選択する指針が必要不可欠である.このパラメータ選択問題に対しても,最適化基準を導出するとともに,効率的な解法を提案する.
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Causes of Carryover |
実験補助費を予算計上していたが,研究代表者本人が実験を行ったため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最適化工学に関する書籍の購入を予定している.
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