2016 Fiscal Year Research-status Report
閉凸集合族の和集合上の最適化問題と信号処理工学への応用
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26730128
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山岸 昌夫 東京工業大学, 工学院, 助教 (30638870)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 信号処理工学 / 最適化工学 / パラメータ選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
信号処理工学を含む様々な工学において,推定対象の先験情報を活用するアルゴリズムが提案され,その高い性能が多数報告されている.多くの場合,アルゴリズムは最適化理論の知見を活かして構成されるため,先験情報を数学的に表現することが効果的活用の要となる.既存手法の多くは,先験情報を凸集合を用いて表現し,凸最適化理論を用いる方針が採用されている.一方で,非凸集合を用いて表現される先験情報を活用するアルゴリズムが待望されている.実際,推定対象のスパース性や推定行列の低階数性などの先験情報は,ある種の非凸集合が自然な表現を与える.
本年度の主要な結果として,「複数の非凸集合の共通部分に属する点を探索する問題」に対して,効率的なアルゴリズムを提案している.鍵となる仮定として,各々の非凸集合が「有限個の閉凸集合の和集合」として表現できることとした.この仮定の下で,各々の非凸集合への距離射影の平均計算に基づく反復アルゴリズムの解析を行い,解への収束を証明することに成功している.
このアルゴリズムは,「閉凸集合への分解」に基づく解法に比べて効率的である.実際,各々の非凸集合を閉凸集合へと分解することにより「複数の閉凸集合の共通部分に属する点を探索する問題(部分問題)」に帰着する場合,閉凸集合の組み合わせを考える必要があるため,膨大な数の部分問題を解かなければならない.提案アルゴリズムはこの「部分問題数の膨張」を解決している.また,上述したスパース性を表現する際に現れる非凸集合が鍵となる仮定を満たすことも確認している.さらに,有限個の閉凸集合のみを用いて表現不可能な非凸集合に対しても,ある種の仮定の下で,提案アルゴリズムが解に収束することを証明している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予期していなかった課題(上述の「部分問題数の膨張」)が生じてしまったが,その解決策を提案することに成功しており,全体としては順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
「非凸集合族の共通集合上の最適化問題」のアルゴリズムの実現を目指す.上述した通り,「複数の非凸集合の共通集合の点を探索する問題」のアルゴリズムを既に実現している.その鍵は各々の非凸集合が「有限個の閉凸集合の和集合」として表現できることであった.そのため,同じ仮定の下で,上述の探索アルゴリズムに僅かな修正を加えることにより,所望のアルゴリズムの実現可能性を検討していく.
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Causes of Carryover |
[11.現在までの進捗状況]で述べた通り,本年度は当初想定していなかった課題を解決するため,理論的な検討が中心となった.そのため,予定していた高速計算機などを本年度中に購入する必要がなくなり,経費の有効活用の観点から,購入を延期することとした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでに得られた理論的な成果を信号処理工学の諸問題へ応用する際に,高速な計算機が必要なることが予想される.その購入費用として使用する予定である.
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