2017 Fiscal Year Research-status Report
閉凸集合族の和集合上の最適化問題と信号処理工学への応用
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26730128
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山岸 昌夫 東京工業大学, 工学院, 助教 (30638870)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 信号処理工学 / 最適化工学 / パラメータ選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
信号処理工学を含む様々な工学において,推定対象の先験情報を活用する高性能アルゴリズムが多数提案されている.多くの場合,アルゴリズムは最適化理論の知見を活かして構成されるため,先験情報を数学的に表現することが重要となる.既存手法の多くは,先験情報を凸集合を用いて表現し,凸最適化理論を用いる方針が採用されている.一方で,非凸集合を用いて表現される先験情報を活用するアルゴリズムが待望されている.実際,推定対象のスパース性や推定行列の低階数性など,近年広く活用されている先験情報は,ある種の非凸集合が自然な表現を与える.それらを直接取り扱うことは一般的に困難であると考えられており,凸緩和するなどの手続きを介して活用されている.
本年度の主要な成果として,特定の階層型最適化問題(最適化問題の解集合上で新たな目的関数を最小化する問題)に対する反復解法を提案している.データサイエンスの分野において,推定対象のスパース性を活用する手法が注目されており,スパース性の活用度合いを決めるパラメータを適切に選択することによって,優れた推定性能を実現することが確認されている.さらに,近年,パラメータの自動選択と対象の推定を同時に実現する手法が提案されている.この手法では,「適切なパラメータを選んだ際の推定結果を解として持つことが期待される非凸最適化問題(問題P)」を定式化している.本年度は,この問題Pの解集合が「有限個の閉凸集合の和集合」であることに着目し,問題Pの解集合上で新たな目的関数を最小化する問題を定式化すると共に,その反復解法を提案している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
28年度に「複数の非凸集合の共通集合に属する点を探索する問題」に対する反復解法を提案し,特定の条件下において,収束解析を与えることに成功している.研究開始当初は,鍵となる条件が「各々の非凸集合が"有限個の閉凸集合の和集合"として表現できること」であると考えていたが,驚くべきことに,「各々の非凸集合が”無限個の閉凸集合の和集合"として表現できる場合」においても,収束を保証する一条件を明らかにすることに成功した.当初想定に比べ,多くの結果が得られたため,これらを「非凸集合族の共通集合上の最適化問題」に拡張するための理論検討に時間を要している.
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Strategy for Future Research Activity |
1.「非凸集合族の共通集合上の最適化問題」のアルゴリズムの実現を目指す.28年度に「複数の非凸集合の共通集合の点を探索する問題」のアルゴリズムを既に実現している.その鍵は各々の非凸集合が「閉凸集合の和集合」として表現できることであった.そのため,同じ仮定の下で,上述の探索アルゴリズムに僅かな修正を加えることにより,所望の最適化アルゴリズムの実現可能性を検討していく. 2.問題Pの解法の高速化を目指す.問題Pの解集合の「有限個の閉凸集合の和集合表現」に着目し,複数の閉凸集合の関係を用いた「解集合のより簡易な表現」を明らかにすることにより,高速化の実現を目指す.
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Causes of Carryover |
当初想定していなかった課題を解決するため,理論的な検討が中心となった.そのため,予定していた高速計算機などを当該年度中に購入する必要がなくなり,経費の有効活用の観点から,購入を延期することとした. (使用計画) これまでに得られた理論的な成果を信号処理工学の諸問題へ応用する際に,高速な計算機が必要となることが予想される.その購入費用として使用する予定である.
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