2014 Fiscal Year Research-status Report
全身触覚を有するダミーロボットを用いた自己保護制御
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26730140
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
清水 俊彦 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (30725825)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒューマノイドロボット / 転倒防止 / 全身反射 / アクチュエータ / 筋骨格構造 / 触覚センサ / 状況認識 / 生活支援機器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,高齢者の転倒防止に関する生活支援機器の開発に向けて,傷害事象の機構解明を行うため,全身触覚を有するダミーロボットの開発を目的としている.本年度は主に,ダミーロボットに使用するアクチュエータの選定,およびロボットの試作を行った.衝撃試験用のダミーロボットという特性上,アクチュエータに求められる要求として,対衝撃性に優れ,軽量で簡便な機構であることが求められる.McKibben人工筋は対衝撃性に優れる反面,外部コンプレッサが必要であり,構造が複雑化する傾向にある.そこで,ナイロン6,6の熱変形を利用した釣糸人工筋肉を利用した.本人工筋は,ナイロン製の釣糸に,負荷をかけながら極限まで捻じり,釣糸をコイル状にすることで製作する.コイル内のニクロム線で熱することで収縮するため,機構を軽量化できる.本年度では,等身大ヒューマノイドロボットへの搭載に向けて,釣糸人工筋の負荷と回転速度に関する制作条件の調査を行った.その結果,既存研究では明らかではなかった,大径の釣糸に関する最適な制作条件に関する知見を得ることができた.また釣糸人工筋とMcKibben人工筋の性能比較実験を行い,同一断面積に対する出力と制作コストの面で,釣糸人工筋が優れていることを確認した. さらに,釣糸人工筋を用いた筋骨格ロボットの試作を行った.まず釣糸人工筋による歩行性能を評価するため,簡略化した下肢の骨格モデルを作成した.試作ロボットによる歩行実験を行った結果,筋骨格構造を持つ下肢の駆動に成功した.一方で,稼動域と応答速度に改善の余地が見られた.最後に,ロボットの制作に必要となる電気回路や,複雑形状の骨格部品の開発環境を整えた.また生活支援機器に関する文献調査を行った.成果の一部は研究講演会にて1回の口頭発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基本的なダミーロボットの設計および開発体制を確立した.具体的には, 釣糸人工筋を作成するための開発装置,高精度計装アンプを用いたストレンゲージによる骨格負荷の測定回路,および3次元曲面を有するアルミ部材を削りだすCNCなど,開発体制の構築を行った.また,ダミーロボットの皮膚は,既存の3Dプリンタにより出力可能な熱可塑性エラストマ,NinjaFlexを用いて試作を行った.さらに骨格の結合部である軟骨部分に関しても,本製品を用いて制作を行った.骨格モデルはスタン標準型骨格モデルに従い,3Dブリンタにより簡易的な形状の制作を行った. 加えて対衝撃性に優れた釣糸人工筋肉に関して,制作条件の検証を行った.本検証で明らかとなった制作条件は,既存研究では扱われていない大径の釣糸に関するもので,釣糸人工筋の実用に関する新たな知見となった.更に釣糸人工筋とMcKibben人工筋との性能比較実験を行った.制作した人工筋は,同一径のMcKibbenと比較して,出力が約1.5倍であることが明らかとなった.一方で,応答速度と収縮率に関して,改善の余地が見られた.ダミーロボットという特性上,制作費用を低コスト化できることが望ましい.そこで熱伸縮する本アクチュエータと空気圧で駆動するMcKibbenに関して,総合的なコストの比較も行う必要がある.制作素材のみで比較した場合,釣糸人工筋は約1/8のコストで作成することが可能であることを確認した. 最後に釣糸人工筋を用いたダミーロボットの制作および実験を行った.実験結果から,制作したアクチュエータは筋骨格構造を有する下肢を駆動できることが明らかとなった.一方で,稼動域と応答速度に改善の余地が見られた.筋骨格構造の増速機構を用いることで,本問題に対処する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い,比較的小型で取組み易い部位である筋骨格型の上肢を開発する.アクチュエータと筋骨格構造に関しては,釣糸人工筋肉と筋骨格構造の制作を行う.関節は,ヒトに近い可動域を有する改良型ボールジョイントを用いる.制作された筋,関節および腱を骨格に組み合わせ,皮膚をかぶせて上腕の試作を行う.衝撃試験は Hybrid-III に制作した上腕を装着して転倒させる.衝撃試験を通じて,各部位が耐久性を満足できるよう材料等の取替えを行う.加えて,反射系による制御を実装し,受身動作を加えた転倒実験により衝撃測定をおこなう. 上肢で得た知見を元に,下肢の設計を行う.下肢の衝撃試験は,Hybrid-IIIに試作された下肢を装着し,高所から転落させて行う.上肢と同様に,各部材に十分な耐久性を有することを確認した後,反射系による制御を実装し,受身動作を加えた転倒実験を行い下肢の衝撃計測を行う. 下肢の実験が完了次第,胴体および頭部の開発に着手する.胴体および頭部の基本設計はHybrid-IIIを参考にする.四肢,胴体および頭部の制作が完了した段階で全身の統合を行う.また神経生理学の知見に基づいて全身反射の実装を行い,転倒要因を考慮にいれた多様な条件下において転倒実験および衝撃測定を行う.ここでは主にコンクリートの床上での歩行時や階段昇降時,庭のような土が敷き詰められた不整地での歩行時における転倒実験を行う.また食卓や椅子といった障害物を散在させた環境における転倒時の衝撃計測等も行う. 最後に得られた衝撃データを元にデータベースを作成し,解析を行う.まず接触データ毎の決定木を作成し,転倒の予測が可能であることを確認する.また得られた決定木を元に接触状況毎の転倒予測に有効な情報量の特定や,運動学習による転倒後の衝撃緩和に最適な動作の解明などを行う.
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