2014 Fiscal Year Research-status Report
形式手法を用いた遺伝子ネットワーク解析手法に関する研究
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26730153
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Research Institution | National Fisheries University |
Principal Investigator |
伊藤 宗平 独立行政法人水産大学校, その他部局等, 助教 (50708005)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | システム生物学 / 形式手法 / 生物学的恒常性 / 選択的スプライシング / 遺伝子ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
「リアクティブシステムの仕様検証」の枠組みを用いて、線形時相論理により遺伝子ネットワークの振る舞いをモデル化し、与えられた生物学的性質を満たすかどうかを検証する枠組みの拡張について研究を行った。この手法では可能な振る舞い集合の中に、特定の性質を満たす振る舞いが存在するか、あるいはすべての振る舞いが特定の性質を満たすか、といった性質が検証可能である。一方で、環境からの生体システムへの入力については、システム自身がコントロールすることができるという前提のもとにモデル化されており、外部入力の扱いが十分になされているとは言い難かった。また、遺伝子発現のプロセスにおいても、単純な一遺伝子一タンパク質の考え方に基づいていた。そこで本課題では、これらの複雑な仕組みに対応できるよう本手法を適切に拡張することを目的としている。 今年度においては、生体システムの恒常性について調査し、恒常性が、環境の変化にさらされても、一定の生物学的性質あるいは機能を保持する、というものであることに着目し、リアクティブシステム仕様の「実現可能性」という概念で形式化できることを発見し、適切な定義を与えることに成功した。この性質の検証は大きな計算コストを要するため、我々はさらに近似的な「弱恒常性」という概念を提唱し、これがリアクティブシステム仕様の「強充足可能性」という性質を対応することを示し、より効果的に検証できることを実証した。また、選択的スプライシング機構について調査し、それらを本研究の枠組みでどのようにモデル化するかについて検討し、適切なモデルを記述することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の予定通り、生物学的恒常性について調査し、数学的定義を与え、それに基づいた検証手法を得ることができた。また、その成果を国際会議論文として発表することができた。さらに、平成27年度に予定していた、選択的スプライシングの機構の分析とそのモデル化手法についても検討することができ、実際にモデルを記述する段階まで進展したため、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度中に予定していた、選択的スプライシングについての研究は一定段階まで進展したため、論文として発表する。平成27年度に予定していた研究を繰り上げて遂行できたため、本来は予定していなかった、本手法の効率化について研究を進める。この点においては、恒常性と実現可能性の対応から、リアクティブシステム仕様の実現可能性を効率的に判定するための既存の手法を利用することや、遺伝子ネットワーク解析という問題ドメイン特有の性質を利用した手法の開発などが考えられる。現在着目しているのは、「部分検証による効率化」と「近似的仕様記述による効率化」の2点である。「部分検証による効率化」では、仕様をいくつかの部分仕様に分けて検証を行うが、その際どのような分割を行うかでその効率は大きく変わってくる。そのため、効果的な仕様の分割方法について検討する。また、「近似的仕様記述による効率化」では、仕様により特徴づけられた振る舞い集合を大きく、あるいは小さく近似した、簡易な仕様を用いて検証を行う。このような検証が恒常性の解析の際にも正当性を損なわず可能であるかどうか調査し、可能である場合には理論的に正当性を証明し、その効果性を評価する。
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Causes of Carryover |
webサーバ用コンピュータの購入は、所属機関のwebサーバのホスティングサービスを利用することで不要となったことが挙げられる。また、研究図書の購入が予定より若干少なかったこと、英文校正費や論文購入費が不要であったことが挙げられる。また、予定していた国際学会への参加が公務上の都合から不可能になり、その分の旅費が発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究図書の購入に関しては、生物学の図書に加え、計算機科学関連の図書の購入に用いる。また、旅費は共同研究者との研究打ち合わせや国際学会への参加に用いる。
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Research Products
(1 results)