2015 Fiscal Year Research-status Report
議論マップとマルチモーダル情報理解に基づく知的対話支援
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26730176
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
嶋田 和孝 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (50346863)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 要約 / コーパス / 自然言語処理 / マルチモーダル / 議論支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
議論は企業における会議や政策・意思決定のみならず,PBLを代表とした教育現場でも能動的学習として行われており,議論を理解するもしくは支援する技術の重要性は年々増している.このような背景のもと,本研究では4人の参加者が何らかの議題について議論する環境を対象とし,その議論に関する内容理解と支援技術の構築を進めている.本年度は大きく3つのタスクに対して研究を行った. (1)コーパスの構築:議論の分析やその後の評価の際に,言語データの蓄積は不可欠である.そこで,「仮想ショッピングモールの新規参入店舗を資料に基づき決定する」というタスクを設計し,そのタスクに基づいた対話データを収集した.収集した対話データを書き起こし,各発話のトピックを人手で割り振り,さらに議論の内容を人手で要約した文書を作成した.本年度は9対話(約4500発話)に28個のトピックタグと各対話に3つの議論要約を作成した.さらに幅広い研究への発展を目指し,収集した対話データをKyutechコーパスと名付け,公開した. (2)非言語情報も考慮した要約技術の確立:議論は言語的なやりとりによって成り立つが,それ以外の非言語情報(音声的情報や参加者の仕草など)も重要な役割を持つ.したがって,それらを複合的に利用するマルチモーダル情報理解が重要である.本年度は,会話中の発話の長さやオーバラップなどの非言語情報や音声的な変化などを考慮した要約技術の研究を行った.実験結果より,非言語情報の有用性を確認した. (3)議論マップによる対話支援:議論マップと呼ぶ議論の可視化ツールを試作し,合意形成対話での有効性について検証した.被験者が作成した議論マップの評価と実験後のアンケートから議論マップの問題点と有効性について確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
議論の状態理解の枠組みとして(1)自然言語処理の側面と(2)マルチモーダル情報理解の側面の両方について,順調な成果を得られている. (1)自然言語処理の側面としては,コーパスの構築と公開まで実現した.公開されたコーパスは,申請者の知る限り,要約に関する情報を盛り込んだ日本語で唯一の自由に利用可能なコーパスである.コーパスの公開は当初の予定にはなく,さらにコーパスそのものは本研究のみならず,研究分野全体としても有意義な成果であり,当初の計画をさらに進めた有益な研究資源である.さらに,表層的な分析だけでなく,事象の時間関係認識など,深い言語処理に関する研究も同時に進めており,研究は順調に進んでいる. (2)マルチモーダル情報理解の側面では,議論要約タスクについて非言語情報の有効性を確認しており,さらに深い情報理解への有効な知見を得ている.また,議論マップによる対話支援の枠組みとその有効性についても確認できている.その結果,この議論マップと自然言語処理との融合の礎もでき,研究は着実に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては(1)Kyutechコーパスの拡充およびマルチモーダル化と(2)そのコーパスに基づく対話理解の2点が挙げられる. 現在のKyutechコーパスには9対話が収録されているが,量的にはまだ十分ではない.また,現在各発話のトピックと正解要約を作成しているが,必要なアノテーションはこれだけではない.本年度Kyutechコーパスを作成したときの経験や知見を踏まえ,このコーパスを質的にも量的にもさらに充実させることが次年度の課題である.さらに,議論マップの実装によって,議論マップを利用した議論を収集することも可能となった.議論マップも踏まえたマルチモーダルコーパスの作成も重要な課題となる. さらに,Kyutechコーパスを対象とした対話理解・分析の研究も推し進める必要がある.本年度はこのKyutechコーパスを用いて発話を適切なトピック毎にまとめるトピックセグメンテーションの実装および評価をした.この結果を発展させ,議論の要約生成を行うことが最初の重要な課題である.また,議論マップを利用し,各対話参加者が作成した議論マップから合意事項の推定や議論状態のフィードバックなどを実装し,具体的な対話支援を行う枠組みの実験的評価も今後の課題である.
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Causes of Carryover |
年度末の出張回数の関係で,一部の旅費が余ったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に組み込み,物品購入もしくは成果発表の旅費として使用する.
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