2015 Fiscal Year Research-status Report
冷温帯・亜寒帯林における菌核の形成・蓄積と微生物風化
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26740003
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
坂上 伸生 茨城大学, 農学部, 助教 (00564709)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 森林土壌 / 菌核 / 外生菌根菌 / 微生物風化 / 土壌生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,冷温帯~亜寒帯林のアロフェン質/非アロフェン質黒ボク土およびポドゾル性土が分布する地域における土壌生成条件の異なる複数地点で土壌断面調査を行い,菌核の空間分布特性から,菌核形成を規定する環境因子を明らかにする。そして,微生物群に各種土壌からの無機元素の溶出の程度を測定して土壌風化ポテンシャルを評価し,菌核分布との関係性を検討し,土壌-微生物-植物間の相互作用を考察することを目指している。 菌核には,微生物風化によって溶出されうるアルミニウムや鉄が含まれている。。そこで,平成27年度は主に,各層位に分布する菌核の14C年代が判明している地点の菌核試料を用いて,菌核内部の元素組成を精査した。 岐阜県御嶽山,青森県岩木山および新潟県妙高山の土壌試料から採取した菌核について,各層位5つの菌核試料を供試して,電子顕微鏡観察ならびに蛍光X線元素分析をおこなった。菌核はメスを用いて切断し,切断面の外側,内側そして中間点でそれぞれ元素分析をおこなった。その結果,御嶽山ではA層(672 yr BP)からBw層(>2000 yr BP)にかけて,炭素量の低下(59.6%→54.5%),主に断面外側でのアルミニウム富化(1.52%→6.22%)が認められた。この傾向は岩木山のA層(modern)とB層(2700 yr BP)でも同様であった。表層および埋没表層の菌核を供試した妙高山では,1A層(およそ200 yr BP)から2A層(200~1000 yr BP),3A層(1000~1200 yr BP)にかけて炭素量低下(65.6%→61.5%)とアルミニウムの増加(1.91%→3.89%)が認められた。 さらなる検討が必要ではあるが,下層から検出される菌核におけるアルミニウム含量の増加は,菌核形成菌の活動による鉄・アルミニウムの溶出が吸着等により菌核の成分として記録されていると期待することもできる。今後,供試菌核の種類を増やすなどして,土壌風化に対する影響を精査していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は菌核試料の電子顕微鏡観察ならびに蛍光X線元素分析に留まっている。今後は土壌-微生物混合培養系を用いた微生物風化の評価を進め,土壌生成作用における糸状菌活動の寄与を考察していく。
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Strategy for Future Research Activity |
冷温帯~亜寒帯林の複数地点で採取した土壌を用いて,優占する微生物群による土壌風化に対する影響を評価する。採取した土壌から抽出した微生物を性状の異なる土壌と共培養し,無機元素の溶出の程度を測定し,風化ポテンシャルと菌核分布との関係性を検討していく。
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Causes of Carryover |
平成27年度中にこれまで得られた成果について国際会議での発表を見込んでいたが,平成28年度に開催されるGoldschmidt 2016(6月,横浜)でポスター発表をおこなうこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は,国際会議における研究発表のほか,菌核が分布する複数地点の生土試料を用いた土壌-微生物混合培養実験を継続し,無機元素の溶出から微生物風化ポテンシャルを導き,実際に生成した土壌に対してどの程度影響があったのかを把握する。
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