2014 Fiscal Year Research-status Report
ヤクスギ年輪の酸素同位体比による過去2000年間の夏季モンスーン変動の高精度復元
Project/Area Number |
26740008
|
Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
佐野 雅規 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト上級研究員 (60584901)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 年輪年代学 / 気候復元 / 酸素同位体比 / ヤクスギ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、樹木年輪のセルロースに含まれる酸素の同位体比が、過去の相対湿度や降水量の変動を正確に記録しているという知見に基づき、老齢のヤクスギを利用することで、西南日本における夏季モンスーンの変動を過去2000年間にわたって復元することを目的としている。本年度は、研究協力者から提供された多数のヤクスギ試料(現生木5個体、土埋木16個体)を用いて、年輪セルロースの酸素同位体比を測定し、西暦238年まで遡る1772年間のクロノロジーを構築した。西暦500年以降については、いずれの年代でも最低5個体以上のデータが重複するように酸素同位体比を測定した結果、再現性の非常に高い年輪クロノロジーを作成することができた。 近隣の気象データとの比較から、期待していた通り、ヤクスギの年輪酸素同位体比は夏季の相対湿度や降水量によって規定されていることが明らかとなった。さらに、日本産のヒノキを用いた先行研究では、樹木の加齢に伴って酸素同位体比が長期的に減少していくという『樹齢効果』を認めていたが、本研究で使用したヤクスギには、そのような明瞭な樹齢効果が検出されず、したがって長周期の気候変動の情報をも復元できる可能性が示唆された。過去1500年間の酸素同位体比クロノロジーの長周期変動に着目すると、いわゆる中世温暖期は乾燥していた一方で、小氷期は湿っていたほか、20世紀に入ってからは乾燥化が顕著に進行していることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まとまった数のヤクスギ試料を収集できたこともあり、当初の計画を大幅に上回る速度で年輪の酸素同位体比データを取得することが出来た。具体的には、現生木5個体、土埋木16個体を対象として、合計で1万を超える年輪セルロースの同位体比を取得することに成功し、西暦238年にまで遡るヤクスギ年輪セルロースの酸素同位体比クロノロジーを作成することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
統計的に信頼度の高いヤクスギ年輪の酸素同位体比データを過去1500年にわたって取得できたので、その成果を論文としてまとめ国際誌に投稿する。また、西暦237年以前のヤクスギ試料を現地で探索し、その酸素同位体比を測定して遡及期間をより過去に延長させる。
|
Causes of Carryover |
今年度に計画していた試料採取調査を翌年度に変更したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に持ち越した分は、フィールド調査、および調査道具の調達に使用する。
|
Research Products
(8 results)
-
-
[Journal Article] A tree-ring cellulose δ18O-based July-October precipitation reconstruction since AD 1828, northwest Thailand2015
Author(s)
Xu, C., Pumijumnong, N., Nakatsuka, T., Sano, M., and Li, Z.
-
Journal Title
Journal of Hydrology
Volume: in press
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-