2015 Fiscal Year Research-status Report
海洋混合層における乱流パラメタリゼーションと粒子状物質の動態
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26740009
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
古市 尚基 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 特別研究員 (70588243)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海洋乱流 / 粒子状物質 / LES / パラメタリゼーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、海洋の広域数値モデル内における物理場(流速、密度など)や溶存・粒子状物質の動態に係る乱流パラメタリゼーション手法を検証・改良することである。平成27年度は、Large Eddy Simulation (LES) と呼ばれる、海洋物理学の分野では特に日本においてその利用が限られていた乱流計算のための数値手法を用いて、東シナ海陸棚域を想定した海底混合層乱流およびそれに伴う濁質動態の数値実験を行った。その結果、水温場の鉛直渦拡散係数と粒子状物質のそれとが同オーダーであり、その結果が粒子の粒径・粒子密度に顕著には依存していないことなどが明らかになった。さらに沖縄トラフ海底付近などの深海域を想定した海底混合層内の乱流過程やそれに伴う濁質動態に関する数値実験を行った。その結果、潮汐による海底境界層の発達は高々40-60 m程度であること、懸濁粒子の大部分はその海底境界層内に留まる範囲で輸送・拡散していることが試算された。この結果は、既往のADCP観測研究の結果と矛盾しないものであることが確認された。数値研究検証のための現場乱流・粒子状物質データの現場観測に参加・解析を行った。本研究を通じて得た科学的知見を学術大会・集会、学術雑誌で発表した。 今日、高解像度の海洋広域数値シミュレーションに対する社会的期待が益々高まる一方で、様々な時空間スケールの海洋運動や物質輸送に影響を及ぼす乱流混合過程を陽に扱うことは依然として甚だ困難である。本研究の成果は、海水温変動などの気候的観点に加え、東シナ海における栄養塩当の物質循環、東京湾における貧酸素化、東日本沿岸における137Csの動態、さらには海底掘削活動に伴う濁質等の拡散・堆積・巻上げ問題など多様な海洋環境・生態系影響問題の評価とその予測能力向上に係る科学的知見を提供するものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度内の実施を予定していた粒子状物質の動態に関する数値研究について、該当する数値実験を進めるとともに、数値モデル検証のための現場乱流・粒子状物質データの現場観測に参加・解析を行った。得られた知見は申請者の所属研究機関(国立環境研究所)における東シナ海における栄養塩動態、東日本沿岸における放射性物質動態、海底資源開発に係る環境影響評価に関する研究などへ活用された。本研究を通じて得た科学的知見を学術大会・集会、学術雑誌で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度(最終年度)は、広域の海洋環境シミュレーション上における改良されたパラメタリゼーション手法の性能評価を行うとともに研究の取りまとめを行う予定である。なお、研究代表者は平成28年度4月より、国立研究開発法人国立環境研究所から国立研究開発法人水産研究・教育機構へ異動したが、業務内容には引き続き海洋シミュレーションに関連するものも含まれており、前所属研究機関の関連メンバーとも適宜連絡をとりながら、本課題を遂行する。 本研究における数値実験は膨大な計算量を必要とするため,研究所内または所外のスーパーコンピュータ上で行う。数値実験結果の保存・バックアップのため、記憶装置(外付けハードディスク)を購入する。解析に必要なソフトウェアのライセンスを更新する。成果発表と情報収集のため、国内外の学術大会に参加する。本研究から得られた知見をまとめて誌上発表する。
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Causes of Carryover |
平成26年度からの繰り越し分を含め、概ね順調に経費を使用した。旅費に関しては、情報収集と研究成果発表のための学会参加等を目的とした費用を計上していたものの、国際学会への参加関連費用が計画当初の想定を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度用として当初計上した費用とともに、学会参加や成果発表に関連した費用の一部として、効果的に使用したいと考えている。
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Research Products
(7 results)