2014 Fiscal Year Research-status Report
熱帯林の劣化ステージに対応した土壌有機物の分解機構の解明
Project/Area Number |
26740011
|
Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
鳥山 淳平 独立行政法人森林総合研究所, 温暖化対応推進拠点, 研究員 (00582743)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 土壌有機物 / 熱帯林 / 森林劣化 / キャッサバ |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯地域において土壌有機物は、元来貧弱な土壌の養分保持機能を強化し、透水・排水性を改善することで農林地における生産活動を支える、人間の生存基盤である。この為、熱帯地域における森林減少と森林劣化(以下森林劣化)に伴う土壌有機物の分解プロセスの解明と、分解速度の予測精度の向上が求められている。本研究は東南アジアの熱帯林において、森林劣化の前後で土壌有機物の存在形態と化学特性の比較を行い、森林劣化の進行が土壌有機物の分解速度に与える影響を明らかにするものである。 今年度はまずカンボジア森林局において、2010年の森林インベントリ調査で得られた、カンボジア中央部の20サイトの土壌試料を取得した。加えて、その中の10サイトにおいて調査区の復元と再調査を行った。10サイトのうち3サイトはキャッサバ畑に転換されており、残りの7サイトは異なる強度の伐採影響を受けていた。キャッサバ畑ではGPSの座標情報に基づき調査区を復元した。森林の保存状態がよいサイトでは、2010年の土壌調査断面(1サイトにつき4地点反復)の跡を確認できた。 次に、これまでにカンボジアで取得された、土壌有機物の存在形態のデータ解析を行った。土壌有機物の存在形態に影響すると予想された因子(森林の常緑・落葉性、土壌中の酸化物量、最低月間降水量)について検討した結果、植物遺体と有機無機複合体に由来する土壌有機物の量はいずれも、土壌中の酸化アルミニウムの量と相関があり、森林のタイプや気候条件に左右されないことを明らかにした。また、熱帯林において伐採後に速やかに分解される植物遺体タイプの土壌炭素含量の推定式を作成し、この地域の土壌有機物の構成を広域的に評価する方法を提案した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事前の予想通りに対象地域の森林劣化が進行している。全体計画の8割程度に相当する10サイト40地点の土壌調査を行うことができた。土壌の物理性データ(容積重)の集計は、当初の計画より進んでいる。原著論文を掲載しており、成果公表も含めて順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度取得した土壌試料の化学分析を行う。植生情報に関する追加調査(毎木調査)を行う。毎木調査と衛星画像解析の結果から10サイトの森林の劣化状態を評価する。森林の劣化状態と土壌有機物の分解過程をつなげる物質循環モデルのプロトタイプを構築し、必要な追加情報を整理する。
|
Causes of Carryover |
自動車借り上げ費用が想定より低く、差額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
土壌試料の化学分析の為の実験消耗品を購入する。土壌試料の調整作業の為に非常勤職員を雇用する。熱帯生態学会に参加する為の国内出張旅費、および追加調査のための海外出張旅費を計上する。
|
Research Products
(1 results)