2014 Fiscal Year Research-status Report
水相パッシブサンプラーによる微量化学物質の測定およびそれらに影響する要因の解析
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26740015
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Research Institution | Research Institute of Environment, Agriculture and Fisheries, Osaka Prefecture |
Principal Investigator |
矢吹 芳教 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境情報部、環境研究部、食の安全, その他部局等, 主任研究員 (00360818)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 農薬 / パッシブサンプラー / 微量有機化合物 / 温度依存 |
Outline of Annual Research Achievements |
農薬等化学物質の吸着剤への吸着特性は温度に依存する。PS法による河川農薬の吸着効率に及ぼす水温の影響を明らかにするため、3段階の水温を設定したキャリブレーション試験を実施し、水温の違いによるサンプラーへの吸着特性を把握した。 農薬のサンプラーへの吸着速度に関係するRs(サンプリングレート)は、実験室内でのキャリブレーション試験により求めた。パッシブサンプラーはPOCISを用いた。1Lのガラス容器にPOCISと農薬添加溶液を入れた。農薬添加溶液は農薬の検出されない河川水ろ過水に農薬混合標準液を添加し、それぞれの農薬の濃度が0.5μg/Lとなるよう調製した。このガラス容器を遮光し、18℃、24℃および30℃の恒温槽に入れ、100rpmで振とうした。農薬添加溶液の濃度を一定に保つため、溶液の交換は毎日実施した。試験開始から7、14、21および28日後にPOCISを回収し、農薬の吸着量を測定しRsを求めた。 キャリブレーション試験の結果、除草剤ブロモブチドの場合、水温18、24および30℃でのRsは、それぞれ0.1726、0.1911および0.2403(L/d)と算出された。18℃、24℃および30℃のすべての試験において、樹脂への吸着量と経過時間との間の相関係数が0.9以上であった約50種類の農薬について、以下のとおり、水温とRsとの関係を解析した。これらの農薬の30℃でのRsと18℃でのRsとの比(Rs 30/Rs 18)は、1種類の農薬(5.6)を除き0.6~2.5であった。水温の上昇によりRsが低下する農薬(Rs 30/Rs 18<1)は10%、水温の上昇によりRsが増加する農薬(1<Rs 30/Rs 18)は90%であった。PS法により水環境中の農薬の濃度を正確に測定するためには、現地での水温測定結果を用いてRsを補正する必要があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は副題1「オリジナルあるいは市販のPSの組み合わせにより幅広く農薬を検出するPS法の構築」、副題2「環境水の水質特性が農薬のPSへの吸着性へ与える影響の解析」について実施した。 副題1については、Oasis HLBに加えて、Oasis AC-2を充てんしたパッシブサンプラーへの農薬の吸着特性を検討するなど、おおむね計画通りに進行している。 副題2については、約50種類の農薬のパッシブサンプラーへの吸着の温度依存性について、明らかにした。また、pHおよびフミン物質(河川水から抽出したものを使用)が農薬のパッシブサンプラーへの吸着に及ぼす影響について、一部実験が終了していないため、実験結果がすべて出たのちに解析する。 一部実験結果が出そろっていないものの、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
農薬の定量的な吸着に有効であると考えられる樹脂をパッシブサンプラーの充てん剤として使用したPS法を、環境水中の農薬モニタリングに適用し、その際に得られる濃度(一定期間の平均的な濃度)と同時に実施するグラブサンプリングで得られた濃度とを比較することで、パッシブサンプラーの有効性について評価する。
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Causes of Carryover |
平成26年度研究計画の副題2「環境水の水質特性が農薬のPSへの吸着性へ与える影響の解析」について、実験に用いるフミン物質を河川水から抽出する作業に時間を有したため、一部実験が終了しておらず、次年度も継続して実施する必要がある。このため、当初の計画では必要と考えられた予算よりも少ない執行額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に実施予定であった副題2環境水の水質特性が農薬のPSへの吸着性へ与える影響の解析」に関する実験について、平成27年度も一部継続して実施する必要があるため、この実験に平成26年度の研究助成金の未使用額を使用する。また、平成27年度分として要求した助成金は、平成27年度に実施する研究に当初の計画通り使用する。
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