2014 Fiscal Year Research-status Report
重粒子線によるDNA二重鎖切断修復特異的に働くユビキチンリガーゼの機能解析
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26740023
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
中島 菜花子 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 研究員 (50402863)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 放射線 / DNA修復 / 重粒子線 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで申請者は、ユビキチンリガーゼRNF8ノックダウン細胞では通常X線と比較し重粒子線後に非常に重篤なクラスターDSB(DNA二重鎖切断)修復欠損を示すことを見出している。 X線によるDSBの場合、細胞核のヘテロクロマチン領域内のDSBがRNF8依存性に修復されると言われている。ヘテロクロマチン領域でDSBが生じた場合、ATMがヘテロクロマチン構成因子であるKAP-1をリン酸化することで、クロマチン構造を弛緩し修復を促進する。この場面において、RNF8は53BP1と協調し、ヘテロクロマチン構造の弛緩を助ける。従って、KAP-1ノックダウンによりヘテロクロマチン構造自体を弛緩した状態でDSBを誘発した場合には、RNF8はその必要性から回避されるためRNF8欠損細胞は修復異常を示さない。平成26年度ではRNF8がヘテロクロマチン構造緩和非依存的にクラスターDSB修復に関与するかどうかを、RNAi干渉法によりKAP1及びRNF8ノックダウン細胞を作製して検証した。ヒト正常線維芽細胞1BRhTERT及びヒト肺がん細胞A549にsiRNAを導入後、クラスターDSBを効率良く誘発する鉄線(200 keV/μm)を照射した。γH2AX抗体をDSBマーカーとして蛍光免疫染色後、蛍光顕微鏡下で修復効率を測定した。重粒子線によるクラスターDSBはRNF8ノックダウン細胞において約90%の修復欠損を示すが、RNF8とKAP1ダブルノックダウン細胞においても同様の修復欠損を示した。この結果から、RNF8がクロマチン構造に依存せず、重粒子線誘発クラスターDSBに対する修復過程に必要である事が示唆された。 重粒子線通過近傍ではDSBのみならず多数の塩基損傷が生じる。塩基除去修復で中心的な役割を果たすXRCC1ノックダウン細胞を用い塩基除去の遅延がRNF8依存性のクラスターDSB修復欠損を導くか検討した。siXRCC1導入細胞とsiControl導入細胞において重粒子線誘導のクラスターDSB修復効率に有意な差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画(1)は計画通りに達成され、RNF8が重粒子線誘発のクラスターDSBの修復においてはクロマチン構造に依存しないことを示した。(2)RNF8依存性のクラスターDSB修復は塩基除去修復とは連携が無いことを示唆する結果が得られた。「重粒子線による塩基損傷の可視化」は、解析に十分な解像度の画像が得られなかったため、解析法の変更が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は大旨研究計画(3)、(4)の通りに遂行する。塩基損傷の可視化を始めとして、今後の研究計画はより解像度の高い画像解析が求められるため、研究協力者の協力の下で、超高解像度顕微鏡DeltaVision OMXを用いて解析する。
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