2014 Fiscal Year Research-status Report
鉱物関連物質の組成制御による臭気成分瞬時捕集材料の創出
Project/Area Number |
26740034
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
川井 貴裕 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (50455903)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 吸着 / アパタイト / 天然鉱物 / 改質 / 消臭 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な不快臭気成分を同時かつ高効率に吸着できる新しい消臭材料の創成を目的とし、部分的な組成制御が可能な鉱物関連物質の一つである水酸アパタイト(HAp)を基材に用いて、その改質条件が臭気成分との相互作用に及ぼす影響について調査した。アンモニアガスの吸着能を向上させるアルミニウムイオンと、硫化水素ガスの吸着能を向上させる銅(II)イオンの双方を添加したHApを異なる条件で調製した結果、それらカチオンを各々含有する水溶液で処理した粉末を物理的に混合した場合に、カチオンを混合させた水溶液中で粉末を処理した場合と比較して、双方のガスをより効率的に吸着できることがわかった。ただし、HApにアニオン置換を施した物質が安定的に得られておらず、臭気成分吸着能に及ぼす化学的相互作用、微細構造変化ならびに表面性状等について精査するまでには至っていない。現在、種々の手法を用いて特にアニオン置換したHApを安定して得ることを第一目標に掲げている。一方、HApの合成プロセスにおいて、原料となるカルシウム塩およびリン酸塩の種類、ならびに合成温度、熟成時間を変化させて得られた配向性の異なるHApに同じ条件で金属カチオンを添加し、アンモニアおよび硫化水素ガス吸着挙動を調査した結果、その濃度減少挙動に違いが見られた。さらに、HAp粉末を有機バインダーと混練した後に焼成することで、数センチメートルレベルの構造体を作製し、これに金属カチオンを添加した結果、粉末でみられた臭気成分吸着挙動と同等の特異吸着性を示した。ただし、固-気相互作用を構造体内部にまで効果的に発現させる工夫が必要である。これらの成果と課題を踏まえ、今後より多くの臭気成分を一括捕集可能な無機固体の創成手法を提案する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HApの合成プロセスにおいて、原料となるカルシウム塩およびリン酸塩の種類、ならびに合成温度、熟成時間を変化させて配向性の異なるHApを得た。これら配向性の異なるHApに同じ条件で金属カチオンを添加し、アンモニアおよび硫化水素ガス吸着挙動を調査した結果、その濃度減少挙動に違いが見られた。この現象が、様々な既存鉱物に対して有効であるとすれば、簡便に消臭機能を向上させる手法として提案することができる。また、マクロ構造化やスケールアップもある程度まで実現したが、臭気成分捕集能を構造体内部にまで効果的に発現させる工夫が必要である。一方、HAp構造中の成分置換に関しては、種々のカチオンで置換したHApの解析が進んでいるのに対して、アニオン置換した物質が安定的に得られておらず、臭気ガス吸着能に及ぼす化学的相互作用、微細構造変化ならびに表面性状について精査するまでには至っていない。現在、種々の手法を用いて特にアニオン置換したHApを安定して得ることを第一目標に掲げている。
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Strategy for Future Research Activity |
アニオン置換したHApを安定して得る手法を探索し、得られた物質の微細構造、近距離秩序、電子状態ならびに表面性状を解析する。その上で、臭気成分吸着能に及ぼすアニオン置換の影響を調査し、HApに対する最適な組成置換のプロセスを決定する。加えて、合成HApの配向性と臭気成分吸着挙動との関係についてさらに詳細に調査し、顕著に影響を及ぼすパラメーターについて明らかにする。マクロ構造体内部への臭気成分導入に関しては、多孔体の作製条件の最適化と、ガス圧制御により達成可能であると考えており、実際に検証を行う。一方、比較的高分子量の有機臭気成分の候補としては、加齢臭の一原因物質として知られるノネナールに着目し、これを効率的に捕集可能なHApの修飾物質と手法について検討する。平成26年度中に、ノネナールガスに対する簡易嗅覚測定の予備試験を実施し、統計的評価ができる体制を整えたため、平成27年度以降は迅速なデータ収集が可能であると思われる。
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Causes of Carryover |
購入を検討していた実験装置と同等品を譲り受け、消耗した部品のみを購入することで代用可能であったため。また、旅費および人件費が当初予定を大きく下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として臭気成分濃度測定器具を当初計画よりも過分に充当し、旅費および人件費ともに交付額に従い充当する。
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Research Products
(2 results)