2014 Fiscal Year Research-status Report
循環資材等の環境安全性評価に資するみず道の影響を考慮した物質動態解析モデルの開発
Project/Area Number |
26740036
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
石森 洋行 立命館大学, 理工学部, 任期制講師 (20434722)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 廃棄物 / 有効利用 / 溶出試験 / カラム試験 / 数値解析 / X線CT / 有効間隙率 |
Outline of Annual Research Achievements |
廃棄物埋立層中のみず道が化学物質の溶出挙動に及ぼす影響を調査するために、粒度を1-2 mmに調整した銅スラグを用いて、廃棄物資源循環学会規格案「再生製品等に含まれる無機物質を対象とする上向流カラム通水試験方法:上向流カラム通水試験」を基本として、通水流速を5水準変化させたカラム溶出試験を実施した。カラム溶出試験から得た化学物質の溶出速度は、通水流速が速いほど増加し、またバッチ溶出試験から得られる溶出速度と比較すると同じ流速レベルではカラム溶出試験の方が高い値を示した。同じ流速レベルにおいて化学物質の溶出速度が、バッチ溶出試験よりもカラム溶出試験の方が高い値を示したのは、カラム試験中では限られた間隙を選択的に流れるみず道の発生とそこを流れる間隙流速がみかけの通水流速よりも高くなるためだと推察され、みず道の影響を定量化するための本研究が重要であることを確認した。
みず道を定量化するために、本研究ではみず道を有効間隙率として評価を行った。銅スラグを詰めたカラムをX線CT解析に供して、間隙構造を画像解析ソフトScan IPによって可視化した。その間隙構造を解析空間としたFEM流体解析(ナビエ・ストークス方程式)を実施し、間隙構造を流れる流体の流速分布を計算した。その結果、銅スラグの間隙構造を流れる流速は、間隙が連続している部分では優先的に高い値でありみず道を形成しているのに対して、デッドポアのような不連続な間隙では流速は発生しない等のみず道を流速分布として可視化することができた。得られた流速分布のスケールのうち、下位1%未満の流速は溶出に寄与しないデッドポアと仮定すると、残りの間隙が溶出に寄与する有効間隙率とみなせる。その結果、全間隙率37.8%に対して、流体解析より同定された有効間隙率は25.2%であった。
以上よりX線CT解析とFEM解析を用いた有効間隙率の同定技術を構築できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銅スラグを用いたカラム溶出試験およびバッチ溶出試験を実施するとともに、X線CT解析とFEM解析を用いた有効間隙率の同定方法の構築は、本研究において最も時間を要する課題であったが、予定通り進めることができた。一方で、溶出試験から得た溶出濃度プロファイルを既往の移流分散解析で予測可能であるのか等の検討は予定していた計画通りには行えていないが、これらは既往理論をベースとした検討であることから大きなエフォートは必要せず次年度で対応できる見込みがあることから「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究方針に以下2点の修正が必要である。まず1点目は、初年度に計画していた溶出挙動を既往理論でシミュレーションで再現できるかを検討する。バッチ溶出試験から得られるパラメータを入力した移流分散解析を実施することで、カラム試験結果から得られた溶出濃度プロファイルをシミュレートできるかどうかを検討するとともに、計算値と実測値に開きがある場合にはその差がみず道(有効間隙率)に起因するものと仮定し、実測値を表現可能な有効間隙率をパラメータした新たな数理モデルを作製する。
初年度に実施した銅スラグのカラム溶出試験では、流速を5水準変化させた実験系列では溶出濃度に対する有効間隙率の影響が顕著に現れず、有効間隙率をパラメータとした数理モデルの作製および検証が困難になると予想される。2点目の修正事項として、溶出濃度に及ぼす有効間隙率の影響を顕著にするために、廃棄コンクリートを試料として、粉砕試料や、10mm角、25mm角、100mm角等のように粒径を人工的に変えてそれぞれに溶出試験を行うことで、溶出濃度に対するみず道の影響を顕著にする工夫を行う必要がある。これにより有効間隙率をパラメータとした数理モデルの開発と検証を進め易くできる。当初の計画では焼却灰を使用して実際の廃棄物処分場を想定した検討を進める予定であったが、溶出濃度に対する有効間隙率の影響を顕著にしその重要性を定量的に確認する必要があることから研究試料には焼却灰ではなく、廃棄コンクリートを用いる計画とする。
|
Causes of Carryover |
研究資金を要する実験や研究打合せは計画通り進んでおり、発生した差引額も予定額の1割未満であることから使用計画としては適切だと考えられる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の実験に要する消耗品費(溶出試験の検液を測定するために必要なPP容器)に充て、研究を進めるために有効に活用する。
|