2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26740039
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
小林 淳 熊本県立大学, 環境共生学部, 准教授 (00414368)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | PCB / PBDE / 生物蓄積 / 同化効率 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリ塩化ビフェニル(PCB)やポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)のような残留性有機汚染物質のリスク管理において、生物蓄積・食物連鎖蓄積の予測精度の向上は重要な課題である。平成27年度は生物蓄積機構に関するパラメータを得るためにヒラメを対象にPCBおよびPBDEの経口曝露実験を行った。当初計画では配合飼料を用いる予定であったが、より実態に近いパラメータを得るため生餌(キビナゴ)を用いた。実験により得られた魚体中の各PCB異性体濃度の時系列変化をもとに解析を行い、取込み速度定数、排泄速度定数、体内半減期、腸管経由の同化効率を明らかにした。本研究で得られた各PCB異性体の排泄速度定数、体内半減期は、既報の海水魚(マコガレイ)の値と同程度であった。しかし、各PCB異性体の取込み速度定数、同化効率は、配合飼料を用いて実験を行った既報よりも高い値を示した。また、本研究の同化効率の値は、生餌を淡水魚に与えた実験における同化効率の値と類似した。これらの結果より、淡水魚・海水魚によらず、生餌を摂取した場合にはPCBの同化効率が配合飼料を摂取した場合よりも高くなること、また淡水魚・海水魚で同化効率は大きく違わないことが示唆された。本研究の各PCB異性体の同化効率の値とオクタノール/水分配係数の値との関係について解析を行い、予測式を構築した。本研究の予測式を用いて推定した同化効率の値は、既報における配合飼料を用いた実験から構築された予測式の値の約1.5倍高く、既報の予測式ではPCBの同化効率を過小評価することが示された。 代謝実験については、野外でスズキ・ヒラメを採取し、これらの肝ミクロソームを用いてPBDEおよび甲状腺ホルモンの代謝実験を行った。より詳細なデータを得るために継続して実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度の研究計画に示した魚類に対するPCB・PBDEの曝露実験は順調に進展し、取込み速度定数、排泄速度定数、体内半減期、腸管経由の同化効率といった生物蓄積機構に関する重要なパラメータを取得することができた。また、腸管経由の同化効率の予測式を構築するなど計画通りの成果を得た。海水魚の肝ミクロソームを用いたPBDEの代謝実験については進展がやや遅れているため、次年度も引き続き実験を実施し、代謝速度定数の予測式の構築などを行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度に引き続き海水魚の肝ミクロソームを用いて代謝実験を行い、PBDEの代謝物を同定するとともに、代謝物と脱ヨウ素酵素との関連について明らかにする。また、代謝実験から各PBDE異性体の代謝速度定数を取得し、その後、代謝速度定数の予測式の構築を行う。その後、今年度に得られた腸管経由の同化効率の予測式、代謝速度定数の予測式などを生物蓄積モデルに組み込み、PCB・PBDEの生物蓄積に関するシミュレーションを行い、予測精度の検証を行う。
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Research Products
(3 results)