2014 Fiscal Year Research-status Report
多成分系ガラスにおけるアルカリ金属-レアメタル複合濃縮相の生成メカニズムの解明
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26740041
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岡田 敬志 福井大学, 産学官連携本部, 特命助教 (30641625)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多成分系ガラス / アルカリ金属酸化物の濃縮 / アルカリ金属種 / 重金属種 / 重金属酸化物の還元反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の目的は、重金属-アルカリ金属を含む多成分系シリケートガラスにおいて、アルカリ金属酸化物の濃縮相生成に関わる因子を探索することである。 まず、アルカリ金属の種類が及ぼす、濃縮相形成挙動への影響を明らかにするため、Na2O-PbO-SiO2系とK2O-PbO-SiO2系のガラスを比較した。一酸化炭素との接触下において、上記のガラスをそれぞれ加熱し、アルカリ金属酸化物の分相の有無を調査した。その結果、Na2O-PbO-SiO2系のガラスについては、気相とガラス相の界面においてNa2Oが濃縮する現象がみられた。一方、K2O-PbO-SiO2系のガラスについては、K2Oの濃縮を確認することはできなかった。また、Na2O-PbO-SiO2系からNa2O-K2O-CaO-PbO-SiO2系へと成分数を増やすことで、Na2O濃縮相の生成量が増加することが分かった。 次に重金属酸化物の種類による影響を明らかにするため、Na2O-PbO-SiO2系、Na2O-CuO-SiO2系、Na2O-ZnO-SiO2系のガラスに対して上記と同様の実験を行った。その結果、Na2O-PbO-SiO2系とNa2O-CuO-SiO2系のガラスについては、気相とガラス相の界面においてNa2Oが濃縮する現象がみられた。 さらに還元反応の進行度による影響を明らかにするため、還元反応時間を変化させてNa2O-PbO-SiO2系のガラスの熱処理を行った。しかし、濃縮相形成挙動の違いを明確には確認できなかった。そこで処理産物内でPbO濃度が異なる部位があることに着目し、Na2O/SiO2比とPbO濃度との関係を調べると負の相関があることが分かった。これはPbOの還元が進むとともにNa2Oが濃縮したことを意味する。 以上のとおり、アルカリ金属酸化物の濃縮に関わる因子を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度における検討項目は、①アルカリ金属酸化物の種類、②重金属酸化物の種類、③重金属酸化物の酸化還元反応の進行度である。このうち、①についてはNa2O-PbO-SiO2系、K2O-PbO-SiO2系のガラスの評価は実施した。Li2O-PbO-SiO2については、電子顕微鏡に付属している元素分析装置ではLiの分析が困難であったため、評価ができなかった。別の手法で評価を行う予定である。②、③については、当初の計画どおり実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究では、還元反応の時間を変化させても、還元反応の進行度とアルカリ金属酸化物の濃縮度との関連性を評価することができなかった。本年度は、還元反応時間をより精密に変化させながら実験を行う。さらに実験対象とするガラス中の重金属酸化物の量も変化させる。 上記の操作によって、重金属酸化物の還元反応の進行度が明確に異なるガラス産物を作成し、ガラスの構造評価を行う予定である。
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Causes of Carryover |
実験が円滑に進んだため、消耗品の量が当初想定したものよりも少なかった。また、技術調査や論文執筆が次年度に持ち越されたため、そのための出張旅費や英文校正費用が当該年度に発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に必要な備品の拡充に充てるとともに、技術調査のための出張旅費や論文執筆時の英文校正費用として使用する。
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