2015 Fiscal Year Research-status Report
多成分系ガラスにおけるアルカリ金属-レアメタル複合濃縮相の生成メカニズムの解明
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26740041
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岡田 敬志 福井大学, 産学官連携本部, 特命助教 (30641625)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 鉛ガラス / 酸化鉛 / 還元反応 / 反応時間 / ガラス構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の目的は、マクロなガラスの構造情報を得るとともに、ガラス中Si, O の電子密度や結合状態といったミクロな情報を集積し、構造変化が生じるメカニズムを明らかにする。 まず、還元反応の時間によって、マクロなガラス構造がどのように変化するかを調べた。反応時間を30min、1h、2hと変えながら鉛ガラスを1000℃で還元溶融し、得られたガラス産物に対して水処理試験を行った。その結果、反応時間の増加に伴い、ガラスから溶出するSiの量が増加した。これらはマクロなガラス構造が変化していることを意味する。還元反応の時間によって、ガラス中Si、Oの電子密度がどのように変化するのかを調べた。上記ガラス産物中Si、Oの化学状態をX線光電子分光分析で評価した。その結果、時間とともに、Si, Oのスペクトル形状が変化した。特にSiについては、反応時間が30minから1hに増加すると、ピーク位置が高エネルギー側へとシフトした。さらに反応時間を2hに延長すると、再びピーク位置が低エネルギー側へと戻った。上記のガラス産物をラマン分光法で分析した結果、反応時間の増加に伴い、スペクトルのピーク数が増加することも確認した(結合状態の変化)。 このように反応時間1hにおいて、ガラス構造の大きな変化が生じた。この時点でガラス中PbOの大部分が還元され、それ以上の還元反応が進行しにくくなる。そのため、PbOの還元除去によるガラス構造変化から、別の機構による構造変化へ切り替わったものと予想している。 還元溶融に加え、700℃、2hの分相処理を行い、得られた産物の水処理実験を行った。ここでも還元溶融における反応時間を30min、1h、2hと変化させた。その結果、溶融時間が1hのとき、産物から溶出するナトリウム量が最も高かった。1hにおいて特徴的な傾向がみられるという点で、上記の構造評価の結果と類似している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度における検討項目は、ガラスのマクロな構造情報、ガラス中Si、Oの電子密度や結合状態評価(ミクロな情報)である。これら項目のいずれについても、当初の計画どおりに実施することができた。 さらに鉛ガラスの還元溶融・分相実験を行い、処理産物からのナトリウムの溶出挙動も評価した。その結果、ナトリウム溶出挙動とガラス構造評価の結果を対応させた形で、データを集積することができた。これにより、還元反応の進行とともに生じるガラス構造変化が、ナトリウム濃縮挙動にどう影響するのか考察するための重要な知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度における研究より、還元反応に伴うガラス構造変化と、ガラス中ナトリウムの溶出挙動とで類似した傾向が観察された。今後は、ガラス構造が具体的にどのように変化するのかを明らかにするとともに、電気化学的な手法によってガラス融液中ナトリウムの移動度を評価する。これにより、ガラス構造とナトリウム移動度との関連を調べる。
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Causes of Carryover |
本年度(平成27年度)において、概ね計画どおりに予算を執行することができたため、初年度(平成26年度)に生じた計画額と使用額の差額分を執行するまでに至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度実施する電気化学測定の装置制作に使用するとともに、技術調査のための出張費や論文執筆時の英文校正費用としても用いる。
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