2015 Fiscal Year Research-status Report
タケノコ採取の生態学~人為的撹乱に対するタケノコの応答
Project/Area Number |
26740045
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
片山 昇 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 学術研究員 (30646857)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 山菜 / 生態系サービス / 人為的撹乱 / 補償反応 / 生態学 / タケノコ / 森林 / 北海道 |
Outline of Annual Research Achievements |
山菜は森林という自然環境に生育する。そのため山菜資源(山菜の生態系サービス)を持続的かつ効率的に利用するためには、基礎生態学で蓄積された知見やアプローチを駆使して山菜を研究することが求められる。本研究は、北海道特産の山菜であるチシマザサのタケノコを対象とし、生態学的な知見を駆使してタケノコ採りという人為的撹乱に対するチシマザサの応答について調べ、タケノコ資源を活用するための情報をまとめることを目的とする。 平成25年から、タケノコの生産性に対する収穫の影響を明らかにするための野外実験を開始した。北海道大学の天塩研究林に10m四方の実験区を20ヵ所設置し、その半数を収穫区として一般的なタケノコ採取の基準で平成25年と26年にタケノコを収穫した。もう半数は対照区としてタケノコを収穫しないまま維持している。最初の収穫の実施年(平成25年)にはタケノコの生産数は処理区間で違いがなかったが、収穫の翌年(平成26年)と翌々年(平成27年)のタケノコの生産数は対照区よりも収穫区で多かった。加えて、少なくとも2年間の収穫では、(1)タケノコの味は低下しないこと、(2)親ササ(成熟したササで、その数は潜在的なタケノコ生産能力の指標となる)の密度は変化しないことも分かった。 多くの植物では、損傷に応答して損傷で失った以上に新しい組織を生産する(補償反応)ことが知られる。上記の結果は、正に「収穫という撹乱で補償反応が引き起こされ、タケノコの生産性は高まること」を示す。 これまでの結果から、「適度な撹乱を加えてササの補償能力を引き出すことで、タケノコの生産性は高まる」という仮説を持った。この仮説を確かめるために、「地上部の刈取り」という収穫とは異なる撹乱をササに与える実験を計画した。この実験のために、北海道大学天塩研究林に20ヵ所の実験区を設け、平成27年に処理(地上部の刈取り)を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、チシマザサのタケノコを対象として、「タケノコ採取」と「ササの刈取り」という2つの人為的撹乱が、翌年以降のタケノコの生産性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。 昨年まで(平成26・27年)の実験で「収穫は翌年のタケノコの生産を高める」という、興味深い結果を得ることができた。この成果を論文にまとめ、その論文は、平成27年12月にPLOS ONEに掲載された。この課題に関しては、当初の期待を上回る成果と判断した。 「地上部の刈取り」にともなう撹乱の影響を調べる課題は、調査・実験場所の選定を終え、平成27年に実験処理を行った。平成28年にそのデータを取る予定である。 以上の2つの状況を考慮し「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果で「少なくとも2年間の収穫では、ササの密度は変化しないが、補償反応を引き起こすことでタケノコの生産は高まる」ことを明らかにした。昨年も同じ方法で収穫処理を継続しているので、「より長期的な収穫(継続的な2年間の収穫)がタケノコの生産性に及ぼす影響」を明らかにするために、本年も対照区と収穫区のタケノコと親ササの数を調べる。 昨年に処理を実施した場所で「地上部の刈取り」に関与する撹乱の影響を調べる。「地上部の刈り」による撹乱でも補償成長が起こるなら「ササ刈りした場所の周囲でタケノコの生産性は高い」と予測できる。加えて、地上部と刈り取ることは、見晴らしが良くなり、タケノコの発見効率は高まる効果も期待できる。本年度は、これらの予測を確かめる。 森林の施業履歴に基づき「過去のササ刈り」からの経過年数にばらつきが出るように考慮して調査地を設定し、ササ刈りからの経過年数によってササ林の特性やタケノコの生産性がどのように異なるかを調べる。この結果から、タケノコ生産に対する「ササ刈り」の長期的な影響を推定する。
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Causes of Carryover |
当初の計画ではタケノコに含まれるアミノ酸などの栄養素を分析する予定だったが、処理区間のタケノコの味に明確な違いがみられなかったため、タケノコの栄養素の分析を取りやめた。分析用の薬品の購入を控えたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
申請者は平成28年に北海道大学から京都大学へ異動した。そのため、これまでよりも調査地(北海道)への移動に多くの経費がかかると予想される。次年度使用額は調査地への移動費に当てる予定である。
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[Journal Article] Response of a wild edible plant to human disturbance: harvesting can enhance the subsequent yield of bamboo shoots2015
Author(s)
Noboru Katayama, Osamu Kishida, Rei Sakai, Shintaro Hayakashi, Chikako Miyoshi, Kinya Ito, Aiko Naniwa, Aya Yamaguchi, Katsunori Wada, Shiro Kowata, Yoshinobu Koike, Katsuhiro Tsubakimoto, Kenichi Ohiwa, Hirokazu Sato, Toru Miyazaki, Shinichi Oiwa, Tsubasa Oka, Shinya Kikuchi, 他5名
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Journal Title
Plos One
Volume: 10
Pages: e0146228
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant