2015 Fiscal Year Research-status Report
流域地質に依存する河川ハビタット構造と魚類群集に対する土砂量レジーム変化の影響
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26740048
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Research Institution | Public Works Research Institute |
Principal Investigator |
永山 滋也 国立研究開発法人土木研究所, その他部局等, 研究員 (70540558)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 流域地質 / 魚類群集 / 河川地形 / ハビタット / 河床環境 / 土砂輸送 / ダム |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度において、伊勢湾流域圏より選定した流域地質の異なる河川において現地調査を実施し、地質に依存した河川内ハビタット構造の一端を明らかにした。河川内の物理環境特性は、たとえ同一地質を流れる河川であっても完全に一致はせず、河川ごとに異なっていた。しかし、結晶片岩の河川では小礫が多く浅い場所が多いこと、花崗岩の河川では砂と大礫が多く浮石が少ないこと、付加体由来の堆積岩の河川では大礫が多く浮石も多いことが、地質ごとの共通の特徴として見出された。 これらの結果は、流域地質が異なると、特に河床環境に際立った違いが認められることを意味している。そして、その影響の一つとして、河床を直接利用して生息している底生魚の生息密度、体サイズ組成が地質によって異なるという結果が得られた。 一方、治山ダムを挟んだ上下流の調査から、ダム下流では礫の構成が変化し、岩盤化も生じ、河床環境だけでなく瀬や淵といった流路単位の構成も変化しており、底生魚、遊泳魚双方に強い負の影響を与えていることが分かった。 以上より、流域地質は河床のハビタット構造を介し、特に底生魚の生態に強く影響を与え、魚類群集構造を特徴付けていることが示された。しかし、ダム等による土砂供給の抑制がその特徴を損なわせている可能性も示唆された。これらは、山地河川における生物・生態系の多様性を理解する上で重要であり、また河川管理にとっても、地質によって配慮されるべき環境が異なる点、既存施設が既に及ぼしている影響を理解する上で有益な知見と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地質に依存した河川内ハビタット構造と、それに応答する魚類群集構造の一端を示せたことに加え、ダムによる土砂量レジームの変化を介したそれらの構造の変化も把握できた。これにより、当初の目的に対し、最低限の成果は得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
調査河川を増やすことで、当該年度の結果をより確かなものにすると同時に、地質の底生魚以外の魚類への影響を検討する。また、類似の勾配を持つ河川区間において流路単位構成の調査を行い、それに対する地質の影響の有無を検討する。そして、過年度成果とともに、流路単位スケール、微環境スケールにおける地質の影響を整理、把握する。また、当該年度に体サイズ組成の違いとしてその一端が見られた、魚類の生態特性に対する地質の影響の可能性について、当該研究課題の中心的内容ではないものの、将来の展開を見据えて検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度は、大きな旅費が発生しない、比較的近いサイトを重点的に調査したため、旅費が抑えられた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
宿泊を要する遠方への調査が増えることにより、当初予定に沿った旅費の執行を見込む。また、流路単位スケールの詳細調査に必要な物品購入を見込む。
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