2014 Fiscal Year Research-status Report
海水資源を回収する複合型膜分離プロセスの高効率化に向けた物質輸送論に基づく研究
Project/Area Number |
26740049
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐野 吉彦 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (90720459)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 複合型膜分離プロセス / 海水淡水化技術 / 製塩技術 / 電気透析 / 膜分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は物質輸送論の立場から,製塩技術と海水淡水化技術からなる複合型膜分離プロセスの高効率化を検討するものである.そのために,まず製塩技術と海水淡水化技術の物質移動を正確に模擬する数理モデルを構築し,各プロセスを連成させることにより,複合膜分離プロセスの解析モデルを提案していく.本年度は製塩技術に主軸を置きながら,両プロセス単体での効率化・省エネ化を検討してきた. まず,海水淡水化技術においては,これまでに提案してきた膜分離の解析手法を用いて,スパイラルモジュールの最適運転条件の決定法を提案しており,国際論文誌Journal of Porous Media に投稿した.また,これらの結果の一部は国際会議IHTC-15でも公表している.本研究により,目標とする淡水量を得るための必要エネルギー量が最小となる海水供給量と供給圧力を理論的に決定できるようになった.これらは海水淡水化において最も重要となる運転条件であり,複合型膜分離プロセスの高効率化に必須な事項でもある. さらに,本研究の主体である製塩技術の高効率化に関しては,実験と理論より,膜近傍における濃度境界層の形成メカニズムの検討を進めてきた.実験においては,当初の予定通り,単層の電気透析から検討を進め,現在では6つの層から成る電気透析層において検討を進めている.未だ,攪拌作用に特化したスペーサー形状の提案には至っていないが,数値解析により電気透析槽内のイオンの動きと脱塩・濃縮挙動を明らかにした.これは国際学会JSSUME2014で発表している.また,製塩プラントを想定し,浸透圧の影響を考慮した理論解析を行うことにより,電気透析槽内の脱塩・濃縮挙動を明らかにした.ここでは,膜表面の濃度を予測することにより,電気透析を行う上で重要となる限界電流密度を決定した.これは国際論文誌 Desalinationに投稿している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は物質輸送論の立場から,製塩技術と海水淡水化技術の両プロセスの高効率化を図り,海水から淡水,食塩などの資源を回収する複合型膜分離プロセスの高効率な運転条件を理論的に決定していく.そのためには,それぞれのプロセスの省エネ化を検討していく必要がある. 本年度に投稿した海水淡水化技術に関する最適運転条件に関する論文は複合型膜分離プロセスの高効率化に必須な事項であり,着実に研究は進んでいると判断できる.製塩技術に関しては,次年度以降にも計画している理論解析が当初の予定以上に進展したため,攪拌作用に特化したスペーサー形状の提案までは至らなかったが,当初の予定通り,複数層から成る電気透析層は完成しており,流れの影響による濃度境界層の形成メカニズムの検討は進めている.この装置は当初予定した装置よりも実機に近い条件で電気透析を行えるようにしており,さらに,それぞれの層の流量を可変できるなど,装置の作成にやや時間を必要としたが,この実験装置で電気透析の高効率化を検討する意義は大きいと考えている.また,現在,投稿中の論文では電気透析の理論解析モデルを提案しており,流れ方向における脱塩・濃縮挙動だけでなく,電気透析を行う上で重要な限界電流密度を決定している.この理論解析は複合型膜分離プロセスの理論解析を行う上で基盤になると確信している.以上のことから,現在の研究の達成度はおおむね順調に進展しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究はこれまでに作成した電気透析層を用いて,スペーサーの形状を検討することにより,海水の濃縮にかかる電力を抑えて,電気透析の省エネルギー化を図っていく.これまでの検討から,膜近傍に発生する濃度境界層により,槽内の電気抵抗が大きく上昇することが分かっている.スペーサーの攪拌作用は濃度境界層の発達の抑制につながると考えており,電気透析で必要なエネルギーであるポンプ動力とイオン輸送にかかる電力を考慮に入れることで,製塩技術の総エネルギーの最小化を目指す.スペーサーの構造に関しては発泡多孔質体を考えており,数値シミュレーションも同時に行うことで,適切な構造を決定していく.また,先に提案した電気透析の理論解析にスペーサーの効果を入れて再検討することにより,製塩プロセスの高効率な運転仕様についても検討していく予定である.ここでは,海水濃度,温度,循環機構の有無による影響も検討することで,現在の製塩プロセスの運転条件を確認するとともに,複合型膜分離プロセスの運転仕様についても検討していく.
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