2016 Fiscal Year Research-status Report
有機物由来培養液を用いた養液栽培の実用化に関する研究
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26740051
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
霧村 雅昭 宮崎大学, 農学部, 助教 (40433065)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機物由来 / 培養液 / 水耕栽培 / ATP / コマツナ / イチゴ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに,芋焼酎粕のメタン発酵消化液を固液分離した液体と脱水ろ液を膜分離活性汚泥法で処理した液体をもとに調製した有機物由来培養液を用いたコマツナ水耕の栽培実験を実施した.有機物由来培養液はpHが高いため,pHを既存の培養液と同等まで低下させたが,10日程度でpH無調整の培養液とほぼ同等まで上昇した.これらの培養液には有機物が含まれているため,微生物の影響を受けたと考えられた. 今年度は,微生物活性と高い相関を示すATP濃度を指標として培養液のpH変動に対する微生物活性の影響について調査,検討した. まず,ATP分析の低コスト化を目的として,ATP発光試薬等の希釈に用いる緩衝液を検討し,発光量が大きくかつ長時間安定する条件を明らかにした. また,培養液中の微生物活性とpH変化の関連性を調査するため,コマツナとイチゴの水耕栽培により培養液のATP濃度とpHの経時的変化について調査した.その結果,pHの変動前にATP濃度が上昇する現象が確認されたことから,培養液のATP濃度とpHの経時的変化には関連性を有することが示唆された. 次に,微生物除去による培養液のpH変動抑制を目的として,MF膜を用いた微生物の除去方法を検討した.イチゴの水耕栽培に使用した培養液を,孔径0.45μmと0.1μmのMF膜を用いてろ過し,ろ液中のATP濃度を調査した.孔径0.45μmm程度のフィルターによるろ過であってもATP濃度が大きく低下し,微生物の多くが除去できたことが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者が研究期間中に米国へ出張していたため,一部の実験が実施できなかったため.
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Strategy for Future Research Activity |
これまので研究結果から,培養液中のpHとATP濃度の経時的変化には関連性を有することが示唆された.また栽培に使用した培養液を孔径0.45μmのフィルターでろ過することでろ液中のATP濃度が大きく低下し,微生物の多くが除去できることが示唆された.したがって,ATP濃度と相関の高い微生物量を抑えることで,有機物由来培養液の問題点の一つであるpH変動を抑制できると考えられた. 今後はこれらの実験結果をもとに,培養液のpH変動抑制技術や有機物由来培養液の利用技術の確立を図るため,下記の実験を行う.①滅菌によるpH変動抑制効果を実証するため,有機物由来培養液および既存の無機培養液をろ過し,pH経時変動を調査する.②培養液のpH変動抑制に最適な微生物処理方法を検討するため,各種微生物処理(ろ過,紫外線照射,オゾン処理,加熱等を検討中)による培養液に与える影響(ATP濃度,生菌数,pH,EC,DO,TOC,培養液組成等)を調査する.③②で検討した微生物処理法を栽培試験に連続的に適用し,培養液のpH変動抑制効果を実証する. また,平成28年度に実験を担当した学生が大学院へ進学したことから,協力して研究を推進する.研究成果の一部は平成29年度9月の学会で発表予定である.
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Causes of Carryover |
申請者が研究期間中に米国へ出張したため一部の実験が実施できず,研究結果に基づく機器の選定ができなかったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の実験では栽培試験をスケールアップし,これまでよりも長期的・高頻度に実験を実施する.また研究成果を学会発表や論文で公表する.
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