2014 Fiscal Year Research-status Report
多摩川源流域における森林構造の歴史的変遷に伴う水収支の推計
Project/Area Number |
26740052
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
橘 隆一 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (20432297)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水資源 / 多摩川源流域 / 森林蒸発散量 / カラマツ人工林 / 水収支 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,多摩川源流域における過去100年間の構成樹種や林齢など森林構造の歴史的変遷に伴う蒸発散量を中心とした水収支の変化を推計することを目的とし,それを達成するために以下3点の小課題を設けている。 1)これまで多摩川源流域内に設けてきたプロットで樹種や林齢毎の正確な実蒸発散量の情報を収集して樹木の生理的特性を把握する。 2)多摩川源流域における過去100年間の森林構造および構成樹種・林齢の変遷を既存報告書から明らかにする。 3)各樹種やその林齢毎の実発散量の情報をスケールアップし、多摩川源流域の過去およそ100年間の森林構造の歴史的変遷に伴う水収支の変化を推計する。 このうち,小課題1)では,「現在の森林蒸発散量の実測定」として,主にカラマツ人工林において蒸発散量の直接計測を,年間を通じて行うことができた。その結果,蒸散量の日変化では,気温と大気飽差,日射量の日変化に対応しており,特に日射量の挙動からおよそ4時間遅れて蒸散量でも同様の変化が認められた。一方,小課題2)では,「過去の森林蒸発散量の推計」として,過去から現在にかけての森林状況に関する資料並びに蒸発散量に関する研究資料の収集と解析を行う予定となっている。これまで,東京市水道水源林事業報告,東京都水道局事業年報,小河内貯水池管理年報,小河内貯水池管理報告から,途中抜けている年度もあるものの,大正3年~平成25年までの奥多摩地域における降水量,流量,気温の情報を収集できた。これらは,過去の水収支の推測には不可欠な情報である。小課題3)では,これまでの現地調査を通じて得てきた実蒸発散量情報を整理し,カラマツ林およびスギ・ヒノキ混交林の実蒸発散量のデータを利用して,現在の多摩川源流域における森林の水消費量を暫定的に推定した。その結果,多摩川源流域における蒸発散率は43.6%(蒸発24.8%,蒸散18.8%)と推計できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,多摩川源流域における過去100年間の構成樹種や林齢など森林構造の歴史的変遷に伴う蒸発散量を中心とした水収支の変化を推計することを目的とし,それを達成するために以下3点の小課題を設けている。 1)これまで多摩川源流域内に設けてきたプロットで樹種や林齢毎の正確な実蒸発散量の情報を収集して樹木の生理的特性を把握する。2)多摩川源流域における過去100年間の森林構造および構成樹種・林齢の変遷を既存報告書から明らかにする。3)各樹種やその林齢毎の実発散量の情報をスケールアップし、多摩川源流域の過去およそ100年間の森林構造の歴史的変遷に伴う水収支の変化を推計する。 このうち,小課題1)では,「現在の森林蒸発散量の実測定」を着実に遂行し,スギ・ヒノキ混交人工林およびカラマツ人工林において蒸発散量の直接計測により,年間を通じた情報を順調に取得できている。 一方,小課題2)および3)では,「過去の森林蒸発散量の推計」として,(1)過去から現在にかけての森林状況に関する資料(東京都水源事務所が所有する森林簿や水道水源林の管理計画書および、水道林施業計画書など)の収集と解析 (2)日本各地で行われている蒸発散量に関する研究資料の収集と解析 (3) (1)と(2)の資料から読み取った蒸発散量推定に関わる情報の整理 (4)過去の森林蒸発散量の変化の推計を行う予定となっている。 ただし,蒸発散量に関する研究資料や報告書の収集や,それらから必要なデータを抜き出す作業が当初の予定よりも捗らずやや遅れている。この原因は,報告書の膨大さとそれらの情報が非デジタル状態であることなどにもよる。情報自体は蓄積されつつあるので,この遅れは取り戻せるよう善処中である。また,これらの情報が収集,整理されれば,後に続く過去の森林蒸発散量の変化の推計は,小課題1)の成果も既にあり,スムーズに進むことが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
蒸発散量に関する研究資料や報告書の収集や,それらから必要なデータを抜き出す作業が当初の予定よりも捗らずやや遅れているので,この課題を中心に進めていく。なお,研究の推進方策自体には大きな問題もないため,当初の計画通り進めていく。
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