2014 Fiscal Year Research-status Report
コモンズの環境保全機能を維持・再生するための費用負担構造の解明
Project/Area Number |
26740058
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
嶋田 大作 福岡女子大学, 文理学部, 講師 (40527876)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コモンズ / 半自然草原 / 入会地 / 過少利用 / 里山 / 費用負担 / 環境経済学 / 重層的資源管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、コモンズの環境保全機能を維持・再生するための管理費用の負担のあり方を解明することである。日本のコモンズの多くは、自然資源の経済的な利用価値が低下したため、利用されずに管理放棄されている状態にあり、過少利用問題と称されている。こうした状況を打破するための取り組みが全国各地で行われており、それらは新しいコモンズとして注目されてきた。新しいコモンズに関する研究は、これまで、主に環境社会学や森林政策学の立場から、都市住民ボランティアの参加など、管理の担い手に関する研究が中心に行われてきた。管理の費用負担についての経済学的な分析は、その重要性にも関わらず、十分行われてこなかった。本研究では、萱場等の半自然草原の保全を事例に、環境保全機能を維持するための費用負担構造のあり方について、包括的に解明することを目的としている。 ローカル・コモンズの管理は一般的に、小規模な集落単位で行われており、十分な資料が整備されていなかったり、資料が存在しても散在していたりするため、管理の実態やその費用負担構造を明らかにすることは容易ではない。また、管理の手法が地域ごとに異なるため、そもそも何が費用なのかすら自明ではない。従って、アンケートなどで多数の事例について一斉に情報を収集することは不可能である。そこで本研究では、少数の調査対象地を、繰り返し調査することにより、管理の費用負担構造を包括的に明らかにする。 初年度は、調査対象地を国内4 事例、北欧1事例程度に絞り込む予定であったが、既に、予備調査を実施していた奈良県曽爾村、熊本県阿蘇地域については、集中的に調査を行い、個別の事例調査として発表できる状況にまで調査が進んだ。他方、その他の調査対象地域については、大阪府の淀川河川敷、福岡県平尾台、大分県くじゅう地域などで調査を実施したが、対象地を絞るまでには至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、国内4 事例、北欧1事例程度に調査地を絞り込むために、様々な地域で予備的な調査を行う予定であった。この計画に対する現在までの達成度は、おおむね順調に進展しているといえる。当初の予定より進展した部分としては、事例候補地の内、奈良県曽爾村と熊本県阿蘇地域では、集中的に調査を行った。特に奈良県の曽爾村の事例に関しては、個別の事例調査として発表できる状況にまで調査が進んだ。他方、予定より遅れている部分としては、その他の調査対象地域について、大阪府の淀川河川敷、福岡県平尾台、大分県くじゅう地域などで調査を実施したが、対象地を絞り込むまでには至っていない。これは、奈良県曽爾村と熊本県阿蘇地域の調査に時間を多く費やしてしまったためである。予定よりも進展した部分と遅れている部分を勘案して、初年度の成果を、おおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、予定よりも順調に進捗している奈良県曽爾村と熊本県阿蘇地域の研究を個別の事例研究として公表していくと共に、他の候補地の絞り込みを進める。また、調査対象地となった地域では、以下の3点を明らかにする。また、こうした費用負担構造のあり方が管理のあり方にどのような影響を与えているのかについても包括的に把握する。 ① 管理行為に対する直接的な金銭の支払い(環境直接支払、管理委託金、各種補助金) ② 管理行為に対する直接的な金銭以外の支援(火入れ時の消防関係、ボランティアの斡旋等) ③ 草原保全の間接的支援(萱活用の推進、草資源を活用した農産品・畜産品の販売促進など、草原保全が間接的に地域住民の経済的な利益につながるような取組)
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Causes of Carryover |
調査対象地の絞り込みを行う上で、一部でスケジュール調整がうまく行かず、予定通り調査を実施できなかった。その分の使用額を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度に実施できなかった調査については、27年度に実施する予定である。
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