2014 Fiscal Year Research-status Report
博物館における海岸漂着物を用いた環境教育とアウトリーチ活動の有効性
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26740061
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Research Institution | History Museum of Hokkaido |
Principal Investigator |
圓谷 昂史 北海道開拓記念館, 学芸部, 学芸員 (70708940)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海岸漂着物 / 環境教育 / 博物館 / 暖流系貝類 / アオイガイ / 対馬暖流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、北海道沿岸で海岸漂着物の調査を行い、最新の海洋環境の実態を捉え、これらを教材として活用する事で博物館における環境教育の有効性を明らかにすることである。 平成26年度は、定点とする余市町浜中海岸で毎月1回(12~3月を除く)、北海道太平洋側(津軽海峡・噴火湾を含む:函館市~苫小牧市)で海岸漂着物の調査や採集を実施した。調査研究の結果、新たにイシダタミ、イボニシ、サクラガイなどの暖流系貝類の打ち上げを確認した。また、余市町では3年連続となるアオイガイの漂着も確認した。さらに、室蘭市沿岸では、ココヤシの漂着が初めて確認できた。これらのような、暖流系漂着物は対馬暖流(津軽暖流)と海面水温の上昇との関連が認められる。各調査研究で得られた成果の一部は、関連する学会等で発表し、学会誌にも投稿した。 一方、平成25年度までの研究成果をまとめた「北海道ビーチコーマーズガイド~北の海辺のたからさがし~」を共著で刊行した(2014年3月1日)。平成26年度は、北海道各地で実施した海岸漂着物に関する野外講座において本誌を活用し、使用者の意見やアンケート等から改良点を整理・評価した。今後は、最新の研究成果を逐次追加し、野外講座を主とするあらゆる場面で活用してさらに内容を充実させ、研究計画の通り改訂版の解説書(ハンドブック)の作成を行う予定である。また、これらの研究成果の一部は、平成27年4月18日にオープンした北海道博物館の総合展示室や企画展で展示中であり、最新の成果を随時展示していく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的の達成のため、平成26年度には海岸漂着物の基礎データ収集と、これらを活用した環境教育教材の開発・実践を計画していた。 まず、野外調査により海岸漂着物の基礎データの蓄積と新知見を得ることができた。特に、噴火湾沿岸においてこれまで確認されることのなかった暖流系貝類が採集されたことは、海洋環境の変化を示す重要なデータとなった。 次に、「北海道ビーチコーマーズガイド~北の海辺のたからさがし~」を基礎資料として活用した野外講座において、受講者からは「初心者が漂着物を調べるのにちょうどよい」、「野外で使いやすい」等、比較的良好な反応が多かった。本誌は、実際に海岸で漂着物を鑑定する目的で構成しており、多種多様な漂着物をカラー写真で紹介したり、防水加工を施した紙を使用している。そのため、現地で発見した漂着物を容易に鑑定でき、子どもから大人まで幅広く活用できることがわかった。しかし、本誌で掲載している内容は、日本海沿岸が中心であり、太平洋、オホーツク海沿岸のデータが不足している。そのため、オホーツク海側で実践した野外講座の受講者からは、地域性を反映した情報の記載に対する要望が多かった。今後は、本研究により蓄積した最新情報を付加し、各地域の特徴や差異を盛り込んだ解説書(ハンドブック)の作成を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究計画のとおり、太平洋沿岸における野外調査を実施し、漂着物の基礎データの収集を行う予定である。しかし、前年度の研究により、地域性を盛り込んだ内容の解説書(ハンドブック)を求める意見が多数あったことから、最終年度に予定しているオホーツク海沿岸の調査も実施することも検討している。また、漂着物を活用した先行事例の調査はほぼ実施できていないことから、道内外を含め調査を計画的に進めていきたい。 一方、解説書(ハンドブック)の内容の充実と最終年度での完成に向け、野外調査におけるデータ収集だけではなく、地域の博物館や愛好家からの情報収集を積極的に行う必要がある。加えて、海岸の清掃活動を行う企業や市民運動にも参加し、漂着物の基礎データを追加し、海洋環境や環境教育への意識や関心についても調査することで、今後の研究活動への参考としたい。
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Causes of Carryover |
職場のリニューアル業務により、予定していた事例調査の一部や室内研究を十分行え無かったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に従い野外調査、事例調査を計画的に実施し、室内研究用の消耗品、備品等を購入し資料の整理・分析を進める事に使用する。
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Research Products
(5 results)