2016 Fiscal Year Research-status Report
多重債務者のための効果的生活再建支援モデルと支援体制のあり方
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26750011
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
石橋 愛架 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (60610920)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多重債務者 / 生活再建 / 支援 / 高齢者 / 消費者被害防止 / 消費者教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、これまでの調査研究から明らかになったことを踏まえ、「家計管理支援論―多重債務者への生活再建支援」(書籍『消費者教育学の地平』第15章)を執筆した。具体的には、多重債務者の生活再建には段階があり、第1段階は、自分が何に価値を置くかを知っており、長期的・短期的な目標を持つことができる状態である。第2段階は、目標を土台として、家計管理能力を獲得し、家族関係を修復し、自立した生活を送ることができる状態である。第3段階は、家計を管理できるようになること、自立した生活ができるようになることをとおして、「価値観に基づいた生活を自分の力で実現できた」ことを実感し、「自分は今後もやっていける」と思える自信を回復できた状態であり、生活再建のゴールであるとした。また、生活再建を実現するための支援として、「主体的に行動させるための相談支援」と「家計管理能力育成のための相談支援」に分けて提示した。前者には、「相談者との関係性を築く方法」「主体性を育む方法」「行動を促す方法」が含まれ、後者には、「家計状況を把握させる方法」「感情をコントロールさせる方法」が含まれる。 研究を進める中で、近年の多重債務が貧困に由来しており、貧困が高齢者世帯に少なくないこと、高齢者の場合は消費者被害が貧困に直結することに問題意識を持つようになった。これまでは、多重債務に陥った後の支援を理論化することに研究の主眼を置いてきたが、それにも増して、多重債務の防止のための消費者教育について研究することが必要であるとの考えに至った。そこで今年度は、高齢者を対象に、消費者被害防止のための啓発活動を行い、その教育内容の理論化のためにアンケートおよびインタビュー調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多重債務者の生活再建とはどのようなことかを明らかにするとともに、生活再建支援の方法を具体的に示し、書籍化(分担執筆)できたことは成果である。しかしながら、学会誌に投稿することができなかった。最終年度は、学術論文の執筆に注力する。
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Strategy for Future Research Activity |
「多重債務に陥るプロセス」「生活再建のプロセス」について調査したが、論文執筆に至っていないため、これらについて執筆する。 さらに、関連する研究課題として、多重債務の防止のための消費者教育について取扱う必要性が生じた。これまでに、高齢者を対象に、消費者被害防止のための啓発活動を行い、その教育内容の理論化のためにアンケートおよびインタビュー調査を実施している。今後も継続して調査を行うとともに、研究の成果を論文にまとめたいと考えている。
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Causes of Carryover |
約18万円の残金が生じた理由は、研究計画を一部変更したからである。つまり、当初は、多重債務者の生活再建のための支援体制づくりの参考にするため、海外調査を予定していたが取りやめ、多重債務の予防に関する研究を行うことにしたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度に使用予定の約58万円は、多重債務の「支援」と「予防」に関する論文執筆にかかる費用にあてる。具体的には、文献複写代、学会発表旅費、投稿料、資料整理やデータ入力のアルバイト代などである。
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Research Products
(3 results)
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[Book] 消費者教育学の地平2017
Author(s)
西村隆男,神山久美,奥谷めぐみ,松葉口玲子,阿部信太郎,橋長真紀子,鎌田浩子,岩本諭,柿野成美,小野由美子,石橋愛架
Total Pages
355(289-307)
Publisher
慶應義塾大学出版会株式会社