Outline of Annual Research Achievements |
本論は, 歴史的小都市である奈良県桜井市初瀬において, コミュニティで暮らし続ける為のまちづくり市民事業の担い手育成を目指し, その成果として支援技術を開発することを目的とした. 現在までに, ①初瀬の景観まちづくり活動の全体把握を行い, これからのまちに必要な機能を確認し,これらを基に, ②初瀬地区のまちづくり市民事業の内容と担い手の検討を行った. さらに, ③社会環境調査として具体的な空家調査を行い事業実現の条件を整理した. 平成29年度は, これまでのまちづくり活動の総括として, ④コミュニティ意識とまちづくり活動との関連性を郵送調査により定量的に検討した. 調査対象者は, 桜井市初瀬地区在住の20歳以上(1,947名)で,回収率は37.6%(731件)であった.分析方法は, 物理的・社会的環境評価と地域への愛着,まちづくり活動への参加, 活動の種別と頻度を得点化し, 年代別(20歳から64歳, 65歳から74歳, 75歳以上)に相関分析を行なった. その結果,20歳から64歳の年齢層のみ関連性(r=0.302, p>.000)が認められた. 一方で活動頻度の得点を見ると, 20代から徐々に増加し, 60代が最頻値で以降の年代では緩やかに低下する傾向であった. このことから, 活動頻度の平均得点が高いものの, コミュニティ意識と活動との相関性が認められなかった65歳から74歳までの参加者は, 別の要因が影響していると推察した. 以上から, 20歳から64歳の年齢層では, コミュニティ意識が高い層,すなわち, 初瀬地区の環境を評価しより良くしようとする意識を持っている人が参加していると考えられた. また,これは前年度までの定性的分析や参与観察を通じて把握できていたことであり, 今回の定量的な結果を裏付けているものと考えられる.
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