2014 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける保育の質とは何か:親の参加と専門職員の労働の質をめぐる理念と実践
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26750013
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
木下 裕美子 京都外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師 (70434644)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フランス / 保育コーディネーター / 資格 / 研修 / ネットワーク形成 / 労働の質 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フランスにおける親と職員が協働する保育を考察の中心にして、保育の質と保育に関わる職員たちの労働の質をめぐる議論を分析することを目的とし、立場の違いによる2つの質に関する折り合いについて、保育・子育て支援をめぐる制度的な仕組み及び関係者たちの活動内容から探究する。 今年度は、保育関係者の実態を理解するためにその資格および養成・研修制度に加え、保育のネットワークの形成に寄与する保育コーディネーターに関する先行研究レビューを中心とした文献研究と、次年度以降に行う調査のための予備調査を行った。文献調査の結果として、保育コーディネーターは、サービス組織から自立した役職でありながら、官僚的な保育行政の業務をこなすという2つの側面を持つことが明らかになった。その上で、保育コーディネーターは保護者への個別対応を行うのではなく、保育所の抱える個々の課題に対応しながら地方分権化の下で地域にある保育の社会的・人的資源をつなぐ(水平的なつながり)役割をもつことが把握された。さらに、彼(女)らのキャリア形成には一定の資格が求められるわけではないことも確認された。 これらの点に基づいて、保育コーディネーターとしてのキャリアパスや保育のネットワーク形成に向けた具体的な活動内容について、簡単なインタビュー調査を行った。 その結果、次のような役割形成のあり方が明らかになった。保育コーディネーターは、各保育所・地域資源の実態とニーズを見極めて自治体のミッションとの関連を図りつつ、各自の専門分野に基づいた分析を行う(裁量性の高さ)。そして、現場と政策を結ぶ役割(垂直的なつながり)を確立する活動を通して、地域の実態に合った保育・子育て支援の展開の外縁を定義し、自らの役割形成を行うのである。この繰り返しの中で保育コーディネーターとして求められる能力の向上が労働の質として問われることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インタビュー調査の実施期間の調整に困難をきたし、予定の時期より遅れて実施することになったことから、その後の作業にやや遅れが生じた。また、予定していた調査協力者が体調をこわしたため、インタビューを中止することもあった。一方で、時期が遅れたとはいえ、予定より多くの事例から聞き取り調査の協力を得ることができ、親参加型保育の地域連合が行う年次総会への参与観察を行うことができた。さらに、次年度以降に調査対象として希望していた専門職員養成機関の校長と面会する機会を得て、調査目的と内容の説明を行い、調査協力の依頼とその合意を得ることができ、調査を継続的に行うための環境を整えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに行った保育コーディネーターに関する研究は国内学会で報告予定である。 今後は労働の質を議論する際に、第一に注目される現場の有資格者を中心にインタビュー調査を継続して実施するとともに、保育コーディネーターを含む保育所内外の多様な社会的アクターとの関係について検討する。また、専門職の学位制度改革における議論とヨーロッパレベルにおける社会的サービスに関わる政策展開の関連性を確認する文献研究を平行して行い、論文等を執筆する。
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Causes of Carryover |
調査時期が若干遅れたことから、テープ起こしの業務依頼が次年度以降にずれ込んでしまったことが原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.当該年度のインタビュー調査のテープ起こし業務を次年度に繰り越した助成金を充当して依頼する。2.プレ調査後の継続的なインタビュー調査を実施するための旅費として助成金を充当する。3.当該年度に調査協力を得た教育機関の提案で行った研究会を継続するための費用として計上した謝金を使用する。4.その他は文献調査費用、資料作成費とおよび翌年度インタビューテープ起こし依頼料になる。
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