2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26750023
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
馬渕 良太 県立広島大学, 人間文化学部, 助教 (00632671)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メタボロミクス / 水産食品 / 養殖ハマチ / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生体内代謝物を網羅的に解析する技術であるメタボロミクスを水産食品へ応用し、魚の新たな品質評価法の開発を目的とした。これまでに、魚でのメタボロミクス研究の報告は少なく、特に魚を食素材としての側面からメタボローム解析した報告は皆無である。本年度は、代表的な赤身魚である養殖ハマチを用い、メタボロミクス実験系の確立を行った。購入したハマチを5℃で1日貯蔵後、4部位(血合肉、腹肉、尾肉、肩肉)に分けた。各部位を凍結乾燥後、粉末状にし、リビトール(内部標準物質)を添加後、メタノール/水/クロロホルム(2.5/1/1)溶液で抽出した。抽出後、トリメチルシリル誘導体化し、GCで分離後、四重極型のEI/MSで分析した。ピークの同定は、n-アルカンで指標化した保持指標とGC/MS代謝成分データベースVer.2から行った。その結果、血合肉で82、腹肉87、肩肉76、尾肉95の化合物が同定された。その中で、59の化合物は、部位に共通して検出され、各部位特異的に検出された化合物は、血合肉13、腹肉5、肩肉0、尾肉10であった。また、血合肉では未検出であり、普通肉(腹・肩・尾)に共通する化合物が16検出された。部位に共通する59の化合物は、有機酸10、アミノ酸17、その誘導物3、ビタミン類3、糖類18、核酸関連物質2、未分類3(アミン1、アルコール類1、尿素1)に分類した。特にグルコース、ガラクトースなどの単糖、乳酸、リジン、クレアニチン、イノシン、尿素などが量的に多く検出された。さらに普通肉に共通する化合物には、うま味成分であるグルタミン酸やイノシン酸が含まれていたことなどから、「おいしさ」や「鮮度」を評価する新たな方法の開発へ期待できる結果となった。現在、得られた結果を、SIMCA13を用いた多変量解析により、ハマチ筋肉部位の判別分析や品質に関する指標の探索を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、ハマチ筋肉を用いてメタボロミクスの実験系を確立すること。確立した実験系を用いて、ハマチの4部位(血合肉、腹肉、尾肉、肩肉)の判別分析を行うこと。これらにより、水産食品としての養殖ハマチへのメタボロミクスの応用が目的であった。GC/MSを用いたメタボロミクスの方法は、①試料の入手および調製、②試料の前処理、③誘導体化、④GC/MS分析、⑤ピークリストの作成(データの変換)、⑥多変量解析によるデータマイニング、⑦関連する因子の抽出となる。現在までに各部位の⑤ピークリストの作成まで達成している。ピークリストから各部位に特異的な化合物が存在すること、「鮮度」や「おいしさ」に関与する化合物が検出されたことなどが明らかとなった。現在、主成分分析による部位の判別分析を行うと同時に、実験系の再現性確認等を慎重に行っている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、平成26年度の研究計画であった⑥多変量解析によるデータマイニングを引き続き行っていく。具体的には、⑤ピークリストの作成で得られたデータを元に主成分分析を行うことで、試料のばらつきの傾向ならびに類似性を解析する。さらにどのような成分がそれらに寄与しているかを、主成分の係数(ローディング)により類推する。解析ソフトは、SIMCA 13を用いる。まずは、この手法を用いてハマチ各部位の判別分析を行う。また、平成27年度および平成28年度の当初の研究計画であった貯蔵試験も併せて行っていく。貯蔵試験では、試料調製に時間が掛かる。そのため、平成27年度中に貯蔵試験で用いる試料の調製を行い、次年度以降の研究が円滑に進むように努める。貯蔵条件は、当初の計画通り、氷蔵、5℃および10℃保存とする。氷蔵での貯蔵時間(平成27年度)および温度(平成28年度)の両面からハマチ肉の品質に重要な因子の抽出を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画の遅れにより、原材料費などの消耗品が一部未購入になった。また学会発表する段階までデータが取れなかったため、学会に参加しなかった。投稿論文についても同上である。以上のことにより、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、引き続きメタボロミクス実験を行うため、それに関連する消耗品(誘導体化試薬・原材料であるハマチ・GC/MS関連品)に使用する。また、研究により得られた新たな知見について、学会発表および論文投稿を予定している。
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