2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26750023
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
馬渕 良太 県立広島大学, 人間文化学部, 助教 (00632671)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 新たな魚肉鮮度評価法 / 貯蔵日数予測モデル / メタボリックプロファイル / メタボライト / 一般生菌数 / K値 / OPLS回帰分析 / ハマチ筋肉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に引き続きハマチ筋肉の貯蔵によるメタボリックプロファイル変化を把握し、新たな鮮度評価法としての有効性を次の通り検証した。 1)普通肉のメタボリックプロファイル変化の把握:0℃で3,7,14日間および5℃で1,3,7日間貯蔵したハマチ普通肉をこれまでに確立したGC/MSメタボローム解析に供した。未貯蔵試料と、各貯蔵試料をOPLS-DA判別分析によって2群間比較した。その結果、0℃では、14日間貯蔵、5℃では、1日以上の貯蔵で統計学的に有意なメタボリックプロファイル変化が起こっていた。さらにS-plot解析を行ったところ、貯蔵により変化する特徴的なメタボライトは、貯蔵日数により異なった。2)貯蔵日数予測モデルの構築:前年度に行った、血合肉の貯蔵試験により得られたデータと、1)のデータを使用し、各部位・温度ごとに貯蔵日数を予測できるモデルをOPLS回帰分析により作成した。本モデルは予測精度良くかつモデルの適合性も概ね良好であった。魚肉は貯蔵により鮮度劣化するため、この貯蔵日数予測モデルは、魚肉の鮮度を評価するモデルとなり得る。3)既存の評価法との比較:代表的な既存の鮮度評価法である生菌数およびK値を同一の試料で測定した。まず、一般生菌をコロニーカウント法により測定した。その結果、本貯蔵試験の条件では有意な増加は認められなかった。本研究で使用した試料はいずれも喫食可能な貯蔵日数であることが確認された。次にUPLC法によりK値を測定した。その結果、先行研究と同様に血合肉では、1日貯蔵以上で約90%まで急激な上昇を示し、普通肉では貯蔵日数依存的な変化をした。核酸関連物質のみで評価するK値は、血合肉と普通肉で大きく異なる変化を示す。他方、本鮮度評価法は、核酸関連物質だけでなくアミノ酸、糖、有機酸などを総合的に評価するため、経時的な変化を見ることができる鮮度評価法である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度から2年計画でハマチ筋肉の貯蔵試験を行うとともに、既存の鮮度評価法である生菌数およびK値を測定する予定であった。予定通り、課題をクリアできたため本研究課題は、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
4年目(最終年度)は、ハマチ筋肉のGC/MSメタボローム解析によって得られたメタボリックプロファイルデータと嗜好型の官能評価結果を比較検討し、魚肉の新たな「おいしさ」評価系を確立するとともに、ヒトが「おいしい」と感じる魚肉に関連している因子(メタボライト)を特定することを計画していた。嗜好型の官能評価は、パネリストの選定が難しい。その理由として「おしいさ」は個人差が大きいため、対象とする集団によって結果が異なる可能性が非常に高い。一方、分析型の官能評価は嗜好型の問題点をクリアできるが、パネリストの訓練、評価方法の選定などに多大な時間と費用を要する。また閾値が高いヒトをパネリストにするため消費者が感じる「おしいさ」を反映していないことも考えなければならない。そこでより再現性の高い「おいしさ」評価系を確立するため研究計画を一部変更する。予定していた評点法による嗜好型官能評価に加えて味覚センサーによる測定を追加する。味覚センサーは、五基本味応答の閾値がヒトに近いため、対象試料のヒトが感じる五味を数値化することができる。そのため、本研究計画に最適な機器の一つである。次年度は、味覚センサーによって得られた五味のセンサー出力(mV)とGC/MSメタボローム解析結果の相関性を解析し、「おいしさ」の予測モデルの構築やヒトが「おいしい」と感じるハマチ筋肉に重要なメタボライトの探索を行う。
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Causes of Carryover |
使用予定であった人件費・謝金が未支出であること、投稿予定である学術論文の作成が遅れたため「その他」の余剰金が発生した。また、本年度購入予定であったK値測定のためのUPLC関連物品は、他の研究課題で先に物品購入および方法の確立が行われたため予定していた物品が未購入となった。そのため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究計画として追加された味覚センサーの測定に必要な物品を購入する。また、これまでに得られた研究成果は学会発表および論文投稿を行うため、それらに係る費用に充てる。
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