2014 Fiscal Year Research-status Report
カロリー制限食の摂取に伴うマイクロRNAを介した免疫増強メカニズムの解明
Project/Area Number |
26750039
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田中 沙智 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (90633032)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カロリー制限 / 免疫機能 / T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
通常の食事のカロリーを30%制限することにより、肥満や糖尿病の発症を抑えるだけではなく、免疫機能が高まることが知られているが、免疫機能の制御に関わる遺伝子とその発現の制御に関わる因子は未解明である。そこで本研究では、カロリー制限によって著しく変化するマイクロRNA(miRNA)に着目し、その免疫機能に与える影響について分子レベルで明らかにすることを目的とする。 そこでまず、カロリー制限によって免疫機能が変化する実験条件を確立するために、マウスに通常飼料、カロリー制限した飼料、高カロリー(高脂肪含有)飼料を4週間摂取させ、マウス脾臓細胞のPopulation解析と免疫応答の変化を解析した。その結果、カロリー制限をしたマウス脾臓のヘルパーT細胞とキラーT細胞の割合は、通常飼料摂取群に比べて有意に高い値を示した。また、カロリー制限をした場合、ヘルパーT細胞のうちのナイーブT細胞(抗原刺激を受けていない細胞)の割合が高くなることを見出した。免疫応答を解析した結果、カロリー制限の影響は見られなかったが、高カロリー飼料を摂取したマウスの脾臓細胞は、LPSの刺激に対してサイトカインを高産生した。以上より、摂取カロリーの違いによって免疫機能が変化する条件を見つけ出し、カロリー制限によって著しく変化するmiRNAを同定するためのマウス実験モデルを確立することができた。 次に、カロリー制限によって変化する免疫機能を制御するmiRNAを探索するために、カロリー制限飼料、あるいは高カロリー飼料を摂取させたマウスより血清を採取し、血中miRNAのマイクロアレイ解析を行った。その結果、カロリー制限によって著しく発現増加するmiRNAと発現低下するmiRNAを選抜することができた。今後は、選抜したmiRNAがどのように免疫機能を制御しているかを詳細に解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度においては、カロリー制限あるいは高脂肪食を摂取させたマウスにおいて免疫機能の変化が起こる実験系を確立し、血中miRNAのマイクロアレイ解析を行った。その結果、カロリー制限によって著しく発現増加するmiRNAと発現低下するmiRNAを選抜することができたことから、おおむね計画通り研究が進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、マイクロアレイで選抜されたmiRNAについて、カロリー制限させたマウスの血中、5大臓器(心臓、肝臓、脾臓、腎臓、肺)、各種リンパ組織、免疫担当細胞での発現をリアルタイムPCRで解析することにより、カロリー制限で変化するmiRNAを同定する。また、同定したmiRNAが免疫担当細胞に対して機能変化を及ぼすかどうかを検証するために、人工的に作成したmiRNA模倣分子を各種免疫担当細胞(T細胞、NK細胞、樹状細胞)添加し、サイトカイン産生や細胞表面分子の発現解析を行う。さらに、miRNAで発現変化する標的遺伝子を同定し、miRNAによる免疫機能制御メカニズムを明らかにする。
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