2014 Fiscal Year Research-status Report
CD8陽性T細胞を介した大腸発酵水素の抗炎症作用の解明
Project/Area Number |
26750045
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Research Institution | Nayoro City University |
Principal Investigator |
田邊 宏基 名寄市立大学, 保健福祉学部, 助教 (60573920)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大腸発酵水素 / 脂肪組織 / 炎症 / CD8陽性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は発酵基質の摂取によって生体内に広く分布した水素分子が、CD8陽性T細胞の活性化抑制を介して肥満および肥満に付随する全身の慢性炎症を軽減することを明らかにすることである。 今年度は肥満モデル動物を用いて大腸水素が脂肪組織炎症に与える影響を検討した。具体的には、13週齢のob/obマウスに標準脂肪 (C) 食およびC+5% フラクトオリゴ糖 (FOS) 食を2週間与えた。試験最終日に腎周囲脂肪H2濃度を測定した。血液中および脂肪組織から分泌されたIL6およびTNFα量、T細胞サブセットを分析した。その結果、FOS摂取マウスの腎周囲脂肪H2濃度はC食群に比べ4倍以上高い値を示した。また、腎周囲脂肪細胞から分泌されたIL6量はC食群に比べFOS食群で減少した。しかし、血液と脂肪組織のCD4陽性、CD8陽性、FOXP3陽性およびRORγT陽性のT細胞サブセットに有意な変化はなかった。以上の結果より、FOS由来の大腸H2は脂肪組織に移行し、IL6分泌量を低下させるが、この変化にT細胞サブセットの変化は関与していないことがわかった。 続いて本年度は5週齢のC57BL/6Jマウスを28日間飼育し、腸間膜脂肪、精巣上体周囲脂肪、腎周囲脂肪、門脈血および末梢血を採取し、密度勾配遠心分離法によりTリンパ球画分を単離、培養する予定であったが、Bリンパ球および顆粒球の変化について検討する必要が発生した。そのため、現在Bリンパ球および顆粒球の変化について検討中である。来年度はBリンパ球および顆粒球の変化ならびにTリンパ球の活性の変化を検討した後、大腸発酵水素と短鎖脂肪酸の効果を分離して評価していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目的は大腸発酵水素がCD8陽性T細胞をはじめとするリンパ球の活性化および増殖を抑制することをin vitroおよびin vivoの両面から明らかにすることであった。詳細な計画としては、13週齢のob/obマウスに標準脂肪コントロール (C) 食およびC+5% FOS食を2週間与えた。試験最終日に腎周囲脂肪H2濃度を測定した。その後、腎周囲脂肪組織から分泌されたIL6およびTNFα量、T細胞サブセットを分析した。その結果、腎周囲脂肪H2濃度はC食群とFOS食群でそれぞれ0.364±108、1.201±0.670 nmol/腎周囲脂肪であった。また、野生型マウスおよび肥満型マウスのいずれにおいても腎周囲脂肪細胞から分泌されたIL6量はC食群に比べFOS食群で減少した。TNFα量はC食群とFOS食群の間で差がなかった。しかし、血液と脂肪組織のCD4陽性、CD8陽性、FOXP3陽性およびRORγT陽性のT細胞サブセットに有意な変化はなかったことを明らかにした。続いて5週齢のC57BL/6Jマウスを28日間飼育し、腸間膜脂肪、精巣上体周囲脂肪、腎周囲脂肪、門脈血および末梢血を採取し、密度勾配遠心分離法によりTリンパ球画分を単離、培養する予定であったが、Bリンパ球および顆粒球の変化について検討する必要が発生したため、本年度の実施を見合わせた。現在はBリンパ球および顆粒球の分離、測定を行うために予備検討を行っている。従って、当初の予想と異なる結果が得られたため来年度の計画に修正を要するが、本年度の実験計画は概ね達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
立案当初の来年度の研究計画は、大腸発酵水素と短鎖脂肪酸の効果を分離して評価することを目的として、2つの実験を計画していた。本年度の結果からまずは、Bリンパ球および顆粒球の変化について検討する実験を実施する。具体的には高スクロース高脂肪コントロール (HSFC) 食で肥満を誘導したラットに、HSFC食およびHSFC+5%FOS食 (HSFF)を4週間与える。HSFC食ラットの一部に飽和水素水を飲水投与する (HSFH)。試験3週後に腹腔内グルコース負荷試験 (IPGTT) を実施する。試験最終日に腎周囲脂肪H2濃度を測定する。血液中および脂肪組織から分泌されたIL6、TNFαおよびCCL2量、リンパ球および顆粒球サブセットを分析する。また、サブセットだけでなくCD8陽性T細胞中のグランザイム量を測定し、活性化の程度を観測する。その後、当初の計画通り5週齢のob/obマウスおよびその野生型を用い28日間飼育し、毎日8時間毎に20分の短鎖脂肪酸または水素水の経結腸投与を行う。飼育最終日に解剖を行い、腸間膜脂肪、精巣上体周囲脂肪、腎周囲脂肪、門脈および末梢血を採取し、フローサイトメーターを用いてリンパ球サブセットを解析する。続いてob/obマウスを28日間飼育した後、結腸灌流ループ処置を行い70 mM酢酸/生理食塩水、10 mMプロピオン酸/生理食塩水、20 mM酪酸/生理食塩水または水素水を60分間灌流する。灌流開始時、開始10、30、60分後に門脈より採血する。解剖時に腸間膜脂肪を採取し、リンパ球サブセットを解析する。本年度の結果からin vivoの実験を一つ増加させた。それによる時間的制約が発生した場合には、購入マウスの週齢を上げて飼育期間の短縮を図ることで解決させる。
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