2015 Fiscal Year Research-status Report
高血糖の母親から生まれた仔の心臓におけるエピジェネティクスコードの解析
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26750054
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
河原田 律子 (那須律子) 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 助教 (60383147)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | EPA / 糖尿病 / 妊娠 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠中に母親が高血糖状態であると、生まれてきた子供には様々な合併症が見られる。とりわけ、心血管系の合併症では心筋肥大症が、胎児期の血糖管理により発症する可能性が報告されている。糖尿病母体から生まれた子供で見られる心疾患の臨床報告は数多くあるものの、分子レベルでの機能解明に至る研究はほとんど行われていない。 そこで、著者らは妊娠期に高血糖を呈する動物モデルを作成し、妊娠中に母親が高血糖に曝されることで、生まれてくる仔の心臓にどのような異常が見られるかについて分子レベルでの検討した。糖尿病妊娠ラットを用いて、妊娠期間中、EPAを胃ゾンデにて経口投与し、生まれた仔の心臓から単離培養した初代心筋培養細胞について、インスリンシグナル伝達系に与える影響を調べた。EPAを摂取した仔の初代心筋培養細胞では、インスリンシグナルの異常やGLUt4の細胞膜への取り込みが改善された。さらに、糖尿病妊娠ラットの仔においては、様々なタンパク質がAGEs化され、酸化ストレスであるreactive oxygen species(ROS)が細胞内で発生していることが明らかになった。また、子宮内高血糖環境によるエピジェネティクスに関して検討を行ったところ、糖尿病ラットの仔の心臓ではヒストン3のK4及びK9のメチル化が促進し、それらに対応するメチラーゼの遺伝子発現も有意に上昇していた。しかし、妊娠期にEPAを摂取する事でヒストン3のK4及びK9のメチル化が抑制された。初代心筋培養細胞を用いた解析により、シグナル異常は子宮内高血糖が引き起こすAGEsやROSによる慢性炎症とエピジェネティクスによる複合的な要因により引き起こされ、EPAがそれらを改善する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画の通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
糖尿病モデルラットの心臓から単離した初代心筋培養細胞を用いて、子宮内高血糖環境によるエピジェネティクスに関して検討を行う。さらに、これまでの子宮内高血糖状態を培養系で再現するために、ラット心筋芽細胞株を用いた実験系を確立し、心筋芽細胞から心筋細胞の分化過程で培地中のグルコース濃度を正常状態と糖尿病状態に変化させて培養を行い、EPAの効果を検討する。方法として、ラット心筋芽細胞株H9C2を、高グルコース(500mg/dL)あるいは低グルコース(150mg/dL)に調整した培地で培養し、詳細な解析を行う。
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Causes of Carryover |
27年度から解析をしているエピジェネティクス解析に関して、H28年度は27年度に得られた結果をもとに詳細に検討する。そのため、抗体等の消耗品を購入するための費用としてH28年度に繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度に予定していた抗体等の購入に使用する。
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Research Products
(5 results)