2015 Fiscal Year Research-status Report
電気系技術者を対象としたロバストデザイン教育のための実習教材の開発
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26750071
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Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
植 英規 福島工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90586851)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロバスト設計 / 若手技術者 / 技術教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で扱うロバストデザイン(設計)とは,製品の使われる環境やユーザーの使い方,長期使用による部品等の劣化に影響されず安定した性能を発揮するような製品を効率的に開発するための設計手法である。研究期間の2年目であるH27年度は,計画にある通り,初学者が煩雑な統計計算に煩わされることなくロバスト設計の手順を学べるような計算システムの開発を行い,完成したシステムを運用して実際の教育を実践した。なお,本システムは当初webベースで構築してタブレット端末から操作することを想定していたものであるが,回路シミュレータによる模擬実験結果をシームレスに解析できることや,ネットワークに接続しないスタンドアロンでの実習を行えることなどの理由により,複数の種類のOS上で動作することに留意しながら,パーソナルコンピュータ上で実行するソフトウェアとして設計した。 本計算システムを用いた実際の教育を実施し,その効果の検証を行った。設計対象は電気回路とし,回路シミュレータと本研究で開発した計算システムを用いて,最終的にはおおよそ2時間程度の実習時間に条件を変えた3回のロバスト設計を実践する教育手順を構築するに至った。この教育手順は,福島高専電気工学科の4年生5名に対して実践しその効果の検証を行った。なお,ここではH26年度に追加検討し効果が示唆されたアクティブラーニング形式の事前実習も合わせて実践している。実習後のアンケート結果からは,我々のこれまでの実践教育では得られなかった,ロバスト設計の概念に関するコメントが複数出された。これは,比較的短時間の実習で実験データを可視化しながら複数回ロバスト設計を繰り返すことで,統計計算の内容に煩わされずに全体を俯瞰することができるようになり,ロバスト設計の概念の理解が進んだことが原因と考えられる。これらの結果は,本研究で構築した教育手順の効果を示唆するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H27年度は,研究期間の初年度に追加検討したアクティブラーニング形式の実習の効果検証を行った上で,実験データを可視化し,統計計算を容易に実施することができる計算システムの構築と実運用を行った。これらの研究成果は2件の学会発表により公表している。しかしながら,申請書では実際の回路を組み立てる実験に基づいた教育手順を構築するとしているところであるが,ここまでの研究成果は,回路シミュレータを用いた模擬実験に基づき構築した教育手順によるものである。これには,計算量の多いシミュレーションデータを用いることによって,学習者に対して本研究で開発した計算システムの効果を認識しやすくするという側面もあるが,学生や初学者に対する実際の教育では,シミュレーションによる仮想実験だけではなく実際の回路を組み立てる事によってロバスト設計の概念を感覚的に把握することが重要であると考えており,現在,現実の回路設計に基づいた実験も含めた教育手順の構築を行っているところである。本研究期間中には,実際の回路設計に基づく実習とシミュレーションに基づく実習を含めた教育手順の構築を行い,電気系の学生に対する実践によって効果検証までを完了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,実際の回路製作に基づいた実習を含めた教育手順を構築するための,教育用回路基板等の試作を行っているところである。これによって,回路シミュレーションと実際の回路製作に基づいた実験と,H27年度までに開発した計算システムを用いた教育手順の構築が完成することになる。本年度はこの回路教材を完成させた上で,電気工学科の学生に対する実践教育を行い,アンケート調査などを通じてその効果を検証していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,学会発表のための旅費が当初予定していた額よりも少なかったためである。また当初計画では,本研究で開発した計算システムに対してデータ入力用にタブレット端末を購入する予定であったが,現時点では計算システムへPCからデータ入力を行っていることによりタブレット端末を購入していないことも原因として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の最終年度であるH28年度では,学会発表による出張を複数回計画しており,その旅費として予算を執行する。また,本研究による教育手順を完成させるための参考資料としての図書経費,さらには,現在施策を行っている回路基板のための部品費や消耗品費としての経費,その他消耗品費として予算を執行する。
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