2015 Fiscal Year Research-status Report
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26750095
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
平岡 隆二 熊本県立大学, 文学部, 准教授 (10637622)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本科学史 / 東西交流史 / イエズス会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1)ゴメス『天球論De sphaera』第2部羅英対訳校訂本の完成・刊行、2)それ以外の研究発表3件(論文・学会発表・図書)、3)関連資料の収集、データ整理、分析が主な活動であった。 1)については、当初より本研究の中核と位置付けてきたもので、昨年度より実施してきた『天球論』写本の校訂・英訳・注釈の成果を羅英対訳校訂本として完成させ、研究協力者の渡邉顕彦氏(大妻女子大学)との共著論文として雑誌SCIAMVSに投稿、第16号(2015年)において刊行した。 2)については、科学伝来黎明期の重要人物として知られる17世紀長崎の天学者・小林謙貞にまつわる論文(「晧臺寺の羅漢石像群と小林謙貞」)と、望遠鏡の伝来・国産化にまつわる学会発表(「近世長崎の眼鏡師と望遠鏡」)および図書(分担執筆「望遠鏡伝来と長崎」)の、計3件を発表した。 3)については、国内出張2回(東京1回、関西1回)等の機会を通じて、近世前期日本天文書の調査・撮影を実施し、そのデータ整理と分析を進めた。また長崎を通じた中国からの漢籍の輸入状況を把握するため、それらに関する資料収集とデータ整理もあわせて実施した。 以上の進捗状況を踏まえ、2016年度は、上記3)における関連諸著作の調査・撮影を継続して行うとともに、内容を整理・分析の上、その成果を随時論文・学会発表等の形で発表してゆく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において掲げた3つのサブテーマのうち、(a)「『天球論De sphaera』第2部の本文校訂と現代語訳・注釈」および(c)「関連漢籍の準備的な所在目録の作成」については、本年度でおおむね達成され、日本語・欧語による論文・学会発表等の研究成果が公表されている。 また(b)「近世日本天文書への影響調査」については、当初の研究計画を下記「今後の研究の推進方策等」のように変更して実施する予定にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画で掲げたサブテーマ(b)「近世日本天文書への影響調査」については、本年度までに収集した計30タイトルを対象とする準備的な分析を行ったところ、『天球論』テキストからの直接的な影響(構成・命題・テキストの一致等)が読み取れるものは現在まで得ることができず、むしろそれらの天文書に特有の言説空間~そこでは儒・仏・神の伝統思想を基盤に、暦・算・易・占・医などの学知が複雑に絡み合いつつ共存している~の存在が浮き彫りとなった。また当時のそのような学的状況について総合的に分析した先行研究もほとんど存在しないか、あってもきわめて限定的であることが分かった。 そうした言説空間の中で、西洋伝来のテキストが果たした役割や位置づけを明らかにするためには、一方で、それら近世前期日本天文書の内容と背景を総体的に把握しつつ、他方では、西洋系テキストの伝来・継承に重要な役割を果たした人物がそうした言説空間とどのような接点を持ちつつ自らの学的活動を展開したかについて追及する、という手続きが必要と思われる。 以上の見通しに基づき、当初計画におけるサブテーマ(b)を、(b-1)近世前期日本で成立した天文書の内容と背景にまつわる研究、(b-2)17世紀長崎の天学者・小林謙貞の事跡と学的活動にまつわる研究、の2点へと変更し、今後の研究を推進してゆく。
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Causes of Carryover |
2015年度は、国内出張費を当初の予定よりおさえることができたため、残金7,825円を次年度にまわすこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度の国内出張経費として支出する予定。
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