2014 Fiscal Year Research-status Report
高レベル放射性廃棄物処分政策における「構造災」再生産メカニズムの検討
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26750096
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
寿楽 浩太 東京電機大学, 未来科学部, 助教 (50513024)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高レベル放射性廃棄物 / 科学技術社会学 / 政策の失敗軌道 / 構造災 / 専門知 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当初に定めた研究計画に基づき、日本のHLW(高レベル放射性廃棄物)処分に関する政策軌道においては、専門知(科学的、学術的あるいは実務的な根拠を持つ専門的知識)が選択的・限定的にのみ参照されてきており、それが政策の失敗軌道形成(すなわち「構造災」の発生)の根本原因に関わることを、質的な調査により実証的に明らかにすることに取り組んだ。 第一に、日本における現行の HLW 処分政策の内実と、内外でこの問題について蓄積されてきた専門知の比較検討を進めた。「蓄積されてきた専門知」 を含む文献として、国内の各種審議会、委員会の文書、国際機関・各国のアカデミー等が取りまとめた報告書類を渉猟し、特に1990年代後半以降のHLW処分政策・事業の制度化の局面において、専門知に基づく重要な考え方(例:「可逆性・回収可能性」)が繰り返し政策論議において出現しながらも、議論の深まりや政策への実質的な反映を見ないままにいわば「消費」されてきたさまを確認した。 このような実情の背景を探るため、第二のアプローチとして、HLW 処分に関係する専門知の生産に携わったり、 政策形成に関与したりしてきた内外の複数の関係者への聞き取り調査(半構造化面接法による)を実施した。特に、米国のHLW処分政策における専門知の反映に深く関わってきた米国「ブルーリボン」委員会元委員で前米国原子力規制委員会委員長のA.マクファーレン教授に対する聞き取り調査が実現し、米国における実情と課題についての貴重なデータを得たほか、翌年度初頭に実施する欧州での聞き取り調査について、合計6名の対象者とのアポイントメントを確保し、さらにHLW処分政策の「先進国」であるフィンランドの関係研究者と連絡を取り、調査のための渡欧の際に国際セミナーを開催することで合意した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主要な二つのアプローチのうち、内外の政策関連文書の渉猟と分析は概ね想定通りに進捗したが、もう一方のアプローチである内外の関係者への聞き取り調査に関して、本務校における教務上の制約(学期中の海外渡航の余地)もあり、海外での関係者聞き取り調査の機会が想定よりも少ない回数しか確保できなかった。このため、分析のために必要な質的データの集積が多少、想定よりも遅れている。ただし、本年度末に次年度初頭における欧州での複数の関係者に対する聞き取り調査をアレンジしたこと等により、遅れは解消できる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、内外での関係者聞き取り調査をさらに計画的・精力的に進める。この際にはHLWに関係する政策・技術等に関する会合、国際会議等の機会を積極的に活用し、効率よい調査の実現に努める。また、前年度に引き続き、すでに学術的な交流関係を形成している HLW 処分工学の専門家である米カリフォルニア大学バークレー校の Prof. Joonhong Ahnならびに加マックマスター大学の長崎晋也教授にも随時、助言を要請するとともに、科学技術社会学や科学技術社会論関係の研究会等の場で本研究の成果を積極的に討議に付し、本研究の成果が社会科学研究者・工学研究者の双方から十分に根拠と説得力を認められる、学際的な強みを持つものとなるよう特に留意する。
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Causes of Carryover |
本研究の主要な二つのアプローチのうち、内外の政策関連文書の渉猟と分析は概ね想定通りに進捗したが、もう一方のアプローチである内外の関係者への聞き取り調査に関して、本務校における教務上の制約(学期中の海外渡航の余地)もあり、海外での関係者聞き取り調査の機会が想定よりも少ない回数しか確保できなかった。また、年度末近くに実施した米国での聞き取り調査は経理の関係上、旅費精算が次年度に持ち越しとなった。これらの理由により、旅費支出が想定を大きく下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては、本年度末に実施した海外調査旅費の精算、本年度中に対象者とのアポイントメントを済ませた欧州での聞き取り調査旅費の執行が確定しているほか、海外での聞き取り調査をさらに複数回実施する計画である。これらの旅費、また聞き取りデータ分析のための書き起こし費用等を執行の予定である。また、調査と分析の進捗を見込んで、秋以降に複数回の国内・国際学会での発表を予定し、すでに日本原子力学会(静岡大学)、国際科学技術社会論学会(4S、米国デンバーで開催)、アジア太平洋STSネットワーク(APSTSN、台湾高雄市で開催)等の研究大会への申し込みを済ませているほか、さらに複数の学会に参加・発表の予定である。これら学会への参加のために参加費・旅費を執行する予定である。次年度使用額はこれらの費用の一部として執行される見通しである。
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