2015 Fiscal Year Research-status Report
高レベル放射性廃棄物処分政策における「構造災」再生産メカニズムの検討
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26750096
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
寿楽 浩太 東京電機大学, 未来科学部, 助教 (50513024)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高レベル放射性廃棄物 / 科学技術社会学 / 政策の失敗軌道 / 構造災 / 専門知 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、当初に定めた研究計画に基づき、海外での関係者に対する聞き取り調査(H27年5月、スイス・フランス・フィンランドにて実施)を行い、諸外国における高レベル放射性廃棄物(HLW)処分に関する専門知生産と政策形成・決定の関係について仔細にわたる情報を収集し、これを国内の政策形成・決定のメカニズムとの比較を進めた。この結果、欧州諸国においては専門知と社会的要請を高次に調停する作業を社会的合意形成の必然的部分として当然視し、早くからそのための制度の整備が進められてきたほか、関係者が専門や立場を問わずにそのことの重要性を深く認識し、自身の役割認識を明確に持っていることが確認された。また、国際機関の専門家からは、日本の問題は専門知の産出にあるのではなく、政策形成・実施における関係機関の役割分担が妥当性を欠くためであるとの鋭い指摘もあった。 なお、フィンランドにおいては、HLW処分問題について研究を進めてきている科学技術社会論研究者であるT. Litmanen教授らの研究グループの招きによりJyvaskyla大学で開かれた国際セミナーに参加し、本研究の中間的な成果について発表して意見を受けるとともに、今後の学術交流に向けたネットワーク形成に努めた。 これらの成果については、科学技術社会論学会、科学社会学会、日本原子力学会、Society for Social Studies of Science、East Asian STS Journal, Asia-Pacific STS Networkの年次大会等、国際・学際性のある場において発表を行い、関係研究者から好意的なフィードバックを得た。また、H27年10月に日本学術会議がHLW処分問題に関して開催した公開シンポジウムに登壇者として招かれ、広く研究者のみならず市民に対しても本研究の成果の一端を紹介する機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主要な二つのアプローチのうち、内外の政策関連文書の渉猟と分析は今年度前半までに概ねの目途を得たが、もう一方のアプローチである内外の関係者への聞き取り調査のうち、特に海外での調査に関して、年度前半には欧州での現地調査を実施できたものの、年度後半はテロ事件等に代表される欧州の治安悪化により追加調査の機会を逸し、データの収集にやや遅れが生じている。成果発表については今年度、内外の関係学会・国際会議等での発信に努めたが、上記の遅れのために、論文等の出版物による成果公表にはもう少し時間を要する見通しである。このため、今年度末を前に実施機関延長の申請を行い、承認を得た。これにより、来年度において上記の遅延を解消し、初期の成果を得られるものと見込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、積み残しとなった関係者聞き取り調査を実施してデータの確保に努めるとともに、昨年度に引き続き、学術的な交流関係を構成している高レベル放射性廃棄物処分工学専門家である米カリフォルニア大学バークレー校のProf. Joonhong Ahnや加マックマスター大学の長崎晋也教授をはじめ、本研究や日頃の研究活動において形成した内外・文理の学際的学術ネットワークを活かし、収集したデータの分析、とりまとめの妥当性について早期から助言や意見を受け、成果公表に向けた取り組みを加速させる。
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Causes of Carryover |
前述の通り、内外の関係者への聞き取り調査のうち、特に海外での調査に関して、年度前半には欧州での現地調査を実施できたものの、年度後半はテロ事件等に代表される欧州の治安悪化により追加調査の機会を逸し、海外出張旅費が想定を大きく下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の事情のため、研究機関延長の申請を行い、承認を得た。これを受け、H28年度に所要の追加調査(海外での聞き取り調査未実施分を含む)を実施し、このための旅費を使用する予定である。また、今年度も内外の学会等での成果発表を希望しているため、このための旅費を執行予定であるほか、最終年度にあたり、研究成果を論文投稿する際の投稿料等も執行の予定である。
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Research Products
(6 results)