2016 Fiscal Year Research-status Report
コンピュータ・シミュレーションの科学技術史構築に向けた理学・工学事例の比較考察
| Project/Area Number |
26750097
|
|---|
| Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
|---|
Principal Investigator |
有賀 暢迪 独立行政法人国立科学博物館, 理工学研究部, 研究員 (90710921)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
| Keywords | 台風進路の数値予報 / 可視化技術 / シミュレーションの分類学 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、【1-a. 詳細分析】【1-b. サーベイ調査】という2種類の調査研究と、【2. 研究会開催】を通じて、「コンピュータ・シミュレーションの科学技術史という研究領域の構築」を目指すものである。
【1-a. 詳細分析】では、前年度に出版された研究論文の内容に基づき、日本における台風進路のシミュレーション（数値予報）の始まりについて、科学史の国際学会で発表を行った。また、次に分析する小テーマである超高層建築の耐震シミュレーションの始まりについて、文献や情報の収集を進めた。
【1-b. サーベイ調査】では、前年度に引き続き、研究者訪問や関連シンポジウムの聴講を通じて、科学技術諸分野におけるシミュレーションの歴史と現状についての情報収集を進めた。今年度は特に、機械工学分野に関して知見を深めることができた。またこの過程で、各分野で使われる用語（たとえば「シミュレーション」「数値実験」「計算機実験」や、「計算機物理」「計算力学」など）に着目した歴史的考察を行うと有益であろうという見通しが得られた。
【2. 研究会開催】では、第一に、シミュレーションの可視化技術としての側面を科学論の観点から掘り下げるためのシンポジウムを企画・実施し、このテーマで文理横断的な検討を行うことについての手応えを得た。第二に、シミュレーションの科学論をテーマとする恒例のワークショップを本年度も開催し、主催者を除き12名の参加を得た。今回は特に、政治学や土木工学の研究者の参加があり、シミュレーションが果たす役割の学術分野による相違や、シミュレーションの「分類学」に関して、更なる知見を得ることができた。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度当初の想定よりも本務にエフォートを割かざるを得なかったために、全体的に遅れが生じた。特に【1-a. 詳細分析】について予定通りに研究を進まなかったことから、この評価とした。ただし【2. 研究会開催】については順調に実施することができ、想定を多少上回る成果が得られた。
|
| Strategy for Future Research Activity |
【1-a. 詳細分析】については、霞が関ビルディング（1968年竣工）に代表される超高層建築の耐震設計にコンピューターが使われるようになった過程について、文献資料をもとにまとめ、論文もしくは研究ノートの形で学術誌に投稿する。
【1-b. サーベイ調査】については、学術分野ごとの用語法の違いに注意しつつ、これまでに得られた知見を踏まえて、国内におけるシミュレーション手法の登場と普及に関する大まかな年表をまとめる。その際には、引き続き、当該分野の研究者（すでに現役を退いた者を含む）から話を聞くなどして、内容の充実をはかる。
【2. 研究会開催】については、例年同様のワークショップを年度内の早い時期に実施する。過去のワークショップで得られた知見を改めて確認し、今後の研究課題を見出すような内容とする。
なお、今年度が本研究課題の最終年度に当たることから、成果全体をまとめた簡易的な報告書を作成する予定である。
|
| Causes of Carryover |
前年度以来の研究スケジュールの変更を受け、研究会を当初予算の段階で計画していた規模では実施しなかったために、招聘にかかる旅費が抑制されたことが主因である。
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
延期していた研究者招聘や、新規に行うことになった聞き取り調査にかかる旅費に充てる。
|
