2017 Fiscal Year Annual Research Report
Toward the History of Computer Simulations: A Comparative Study in Science and Engineering
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26750097
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
有賀 暢迪 独立行政法人国立科学博物館, 理工学研究部, 研究員 (90710921)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シミュレーションの科学史 / 数値予報の歴史 / 耐震設計の歴史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、コンピューター・シミュレーション(以下、CS)の科学技術史という、これまでほぼ前例のない研究テーマの開拓を目的に、以下の調査・分析に取り組んだ。最終年度は、各事項の補足的研究と全体の総括に充てられた。 1. 日本国内における初期のCSの具体例として、台風の数値予報(1950年代)と超高層ビルの耐震設計(1960年代)を取り上げ、それぞれの過程を一次資料に基づき考証した。前者では手計算(図式計算)からリレー計算機、さらに電子計算機へと進んだ過程を、後者ではアナログ計算機からデジタル計算機へと進んだ過程を明らかにしたが、これらの計算手段の変化は、認識論的には大きな変化をもたらしていないと考えられた。この両事例から示唆されたのは、CSによる科学研究の進展を記述する際には、モデルの改変や計算手法の改良といった実践的側面に目を向ける必要があること、また、研究の過程でどのような知見がどのようにして生み出されているのかに着目することで、より充実した歴史叙述が可能になるということであった。 2. 前項の事例研究によって示唆された歴史叙述が、どの程度の妥当性を持つのか検討する材料として、他の理工学分野(具体的には、物性物理学、プラズマ物理学、数値流体力学、材料力学など)についても、当事者による回想などを収集した。また、現代の研究者の参加を得て、CSの科学論をテーマとする研究会を開催し、学術分野の違いによるCSの共通点・相違点を議論した。これらの分析を総合した結果、CSの歴史研究においては、シミュレーションと旧来の手法との連続性や、他の研究手法(たとえば実験や観測)との関係性、さらには基礎となる原理・法則の認識論的地位といった点に注目することが、特に有効であるという示唆が得られた。 以上により、本研究を通じて、CSの科学技術史を研究する上での基本的視座を提示することができたと考えている。
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