2014 Fiscal Year Research-status Report
蛍光X線法による極微量(1.1mg)考古遺物試料の元素組成分析
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26750099
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
市川 慎太郎 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究員 (90593195)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 蛍光X線分析 / 微量試料 / 考古遺物 / 土器 / 文化財 |
Outline of Annual Research Achievements |
考古遺物は貴重であるため、分析の際には、破壊が許されないこと・極少量のサンプリングしか許されないことがほとんどである。しかし、代表化学組成を得るのに有効なガラスビード/蛍光 X 線法は、測定試料の調製に比較的多量 (数百~数千 mg) の粉末試料を必要とする。そこで、本研究では、測定に必要な試料の量を大幅に削減した、正確な化学組成分析法の開発を目的としている。 極微量粉末試料 (1.1 mg) と融剤 11 mg とによる、直径 3.5 mm 程度、厚み 0.8 mm 程度のマイクロガラスビード分析試料の調製方法を構築した。検量線の作成には、頒布標準物質ではなく、試薬調合による検量用標準を用いた。この検量用標準は、定量成分を含む特級試薬を混合し、実試料と同じ希釈倍率 (試料 : 融剤 = 1:10) で調製したマイクロガラスビードである。本法で、地球化学標準試料 (JB-1a, JR-3, JSd-2) を分析したところ、主成分である Na, Mg, Al, Si, P, K, Ca, Ti, Mn, Fe だけでなく、一部の微量成分元素 Ni, Zn, Rb, Sr も正確に定量することができた。また、本法による土器 2 種類および黒曜石の分析値は、従来法 (試料400 mg, 試料 : 融剤 = 1:10, 直径 35 mm のガラスビード) のものと概ね一致した。 考案したマイクロガラスビード/蛍光 X 線法は、試料の量が著しく少なく、測定径が小さいにも関わらず、岩石・堆積物・土器・黒曜石を良好に分析することができた。したがって、この方法は、極微量のサンプリングしか許されない土器などの考古遺物への応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度には、極微量試料 (1.1 mg) の蛍光 X 線分析用マイクロガラスビードを開発し、その基本的な作製技術を概ね構築した。また、本法用の検量用標準の調製、いくつかの標準物質による正確さの検証も完了しているので、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた研究成果に基づいて、マイクロガラスビード/蛍光 X 線法の有効性を明らかにする。そのために、以下の 3 項目を進める予定である。 (1) 定量可能な微量成分元素を拡張する。土器の起源推定に有効な Y, Zr, Nb や V, Cr などに着目し、定量条件を最適化する。また、これらの元素を定量するための検量用標準を調製する。 (2) 様々な試料に適用できることを示すために、種々のケイ酸塩試料の標準物質を分析する。土器の標準物質は存在していないため、岩石、河川堆積物、土壌や粘土の標準物質を分析予定である。また、分析結果を、従来のガラスビード/蛍光X線法 (① 試料 400 mg, 試料 : 融剤 = 1:10, 直径 35 mm のガラスビード、②試料 11 mg, 試料 : 融剤 = 1:36, 直径 12.5 mm のガラスビード) のものと比較する。 (3) 本法で正確な起源推定が可能か否か検証する。既知の土器試料を本法で分析し、その推定結果を既報のものと比較する。試料には、伊豆諸島で出土した土器片を用いる。起源推定は、2 次元散布図や多変量解析 (主成分分析やクラスター分析) で行う。 以上の研究成果は、既に得られた成果とあわせて、平成27年度の日本文化財科学会第 32 回大会や Denver X-Ray Conferenceで発表する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の研究成果および成果のまとめを次年度 (最終年度) に公表するために、支出計画を若干変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際会議の参加登録費や旅費、投稿論文の英文校閲費として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)