2014 Fiscal Year Research-status Report
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26750101
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
渋谷 綾子 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 特任助教 (80593657)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 残存デンプン粒分析 / 縄文時代 / 北日本 / 野生植物利用 / 石器 / 土器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,北日本の縄文時代遺跡から出土した石器や土器の付着物に含まれる残存デンプン粒を分析することによって,野生植物食料の加工技術を復元し,当時の植物食の実態を明らかにすることである。具体的には,植物の加工具とされる石皿や磨石類,および土器内面の付着物について残存デンプン粒の検出を試み,石器や土器の加工対象となった植物を検討する。
平成26年度に実施した調査は次の3項目である。(1)北海道北黄金貝塚から出土した縄文時代前期・中期の擦石や石皿の分析,(2)北海道若生貝塚から出土した縄文時代前期の石器の分析,(3)現生植物標本の観察。残存デンプン粒分析は非破壊分析であり,近年周知されつつあるが,事前に分析の対象資料を選定し,試料採取の許可を得る必要がある。(1)はすでに事前調査を平成24年度以降に実施しており,試料の採取許可が得られた資料から順次分析を行った。(2)は新規の調査であり,今年度の分析結果をもとに,平成27年度以降の分析調査の計画について関係機関と協議や調整を行った。(3)については,今年度は(1)と(2)を中心に進めたため,ごく一部の標本の採取にとどまったが,平成27年度以降主体的に進める予定である。これらの調査と分析結果の評価については,伊達市噴火湾文化研究所の西本豊弘氏・青野友哉氏,弘前大学の上條信彦氏の協力を得て実施した。
研究成果の一部は投稿し,平成27年3月末刊行の『国立歴史民俗博物館研究報告』第195集に研究ノートとして掲載されるとともに,平成24年度以降の研究成果と合わせた研究展望を平成27年6月刊行の『古代文化』第67巻第1号で掲載予定である。また,第6回東アジア考古学会(平成26年6月)や第29回日本植生史学会大会(平成26年11月)において成果を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで,資料調査と分析用試料の採取は滞りなく順調に進んでいる。石器から採取した試料の顕微鏡観察が一部遅れており,現生植物標本の調査とともに平成27年度も継続して進める必要がある。
平成26年度当初の計画では,北黄金貝塚の出土石器について試料の採取を行うとともに,若生貝塚の出土石器について新規の調査を開始,関係機関との協議や調整を行う予定であった。北黄金貝塚については分析の対象資料を選定し,分析を実施した。採取した試料数が多く,顕微鏡観察が平成26年度中に完了しなかったため,平成27年度も作業を継続する予定である。若生貝塚については研究協力者の上條氏が分析を行った結果,平成26年度発掘調査で出土した石器からは残存デンプン粒をまったく確認することができなかった。そこで,別の縄文時代遺跡との比較・研究を行うこととなり,平成26年度末から資料の選定等の協議と調整を開始している。
現生植物を用いた参照標本の研究について,平成26年度は出土石器の分析を集中的に実施したため,一部の標本の採集にとどまり,残存デンプン粒の加工調理実験を行うことができなかった。平成27年度はこちらの研究を中心に進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に得られた結果をもとに,平成27年度も分析調査を継続していく。現生植物の標本調査・研究を中心として,北黄金貝塚と若生貝塚の出土石器の分析を進める。平成27年度は特に,植物試料を用いたデンプン粒の加工・調理・残留実験を行い,デンプン粒の損傷・分解率の測定を主体的に行っていく。
平成27年度に行う研究成果の公表については,平成26年度に得られた分析結果を中心として,5月の一般社団法人日本考古学協会第81回(2015年度)総会とAWRANA2015(Association of Archaeological Wear and Residue Analysts),7月下旬の国際第四紀学連合第19 回大会(XIX INQUA Congress),11月の日本植生史学会など国内外の学会で研究発表を行い,研究成果を国内外に広く発信する。さらに,国内外の学術雑誌への論文投稿に向けて準備を行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度研究費の残額については,平成27年5月にAWRANA2015(Association of Archaeological Wear and Residue Analysts,オランダ)と7月下旬の国際第四紀学連合第19 回大会(XIX INQUA Congress,名古屋)に参加し,研究発表を行うための旅費と会議参加費等に充当する。残りは,資料調査および分析試料の採取時に詳細な観察を行うことのできるデジタルマイクロスコープ(10万円程度)を購入する費用とする。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の研究費では,個別の実験消耗品(白スライドガラス,カバーガラス,ピペットチップ,ポリチャック等)の購入が必要となるほかは,備品・消耗品費に関しては平成26年度の使用額の半分程度に収まる予定である。
旅費については,北海道伊達市北黄金貝塚や若生貝塚などの資料調査・分析試料の採取に関する調査旅費とともに,平成26年度の研究成果を公表するため,日本考古学協会や日本植生史学会などの学会参加に用いる国内旅費が多く必要となる。平成26年度は支出のなかった謝金については資料整理や英文校閲等で使用する予定があり,前年度より若干増える見込みである。ただし,研究協力者の機器類を借りるための施設使用費や会議を含む「その他」の経費は大幅に減る予定である。備品・消耗品費とともに国内・国外旅費に振り分け,より多くの調査や研究成果の公表を実施する予定であり,全体として平成27年度研究費の支給額内に収まる見込みである。
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Research Products
(10 results)