2014 Fiscal Year Research-status Report
塑像・乾漆像の部材構造を考慮したより高精度な地震時応答解析手法の開発
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26750102
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
森井 順之 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, その他部局等, 主任研究員 (30342942)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 個別要素法 / 塑像残欠 / 損傷調査 / 免震装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
現存する塑像や乾漆像の実見から損傷もしくは修理箇所の確認を行い、どの部分が脆弱かの把握を行った。以前、東大寺法華堂安置仏像群における調査を実施した際に、乾漆造の梵天像および帝釈天像のかかとにひびが見られており、乾漆造金剛力士像実物大模型の加振実験で撮影した画像を解析することで、台座と胴体の動きに違いが見られるとともに、足もとの変位が小さく応力が他の部分に比べて大きいことが確認された。今年度は、薬師寺(奈良市)、大分県立歴史博物館(宇佐市)で現地調査を行った。とくに大分県立歴史博物館で借用展示している天福寺塑像残欠は膝より下が無く、類型化につながる情報を得ることができなかった。しかしながら、天福寺塑像残欠は免震装置の上に安置されており、今後本研究で重要な構造安定性の調査を進める対象として選定した。 また、加振実験結果との比較をスムーズに行うため、個別要素法による数値計算を開始した。個別要素法プログラムは木造住宅倒壊解析ソフトウェアとして開発され、オープンソースでもあるwallstat(国土交通総合研究所)を用い、まずは過去に剛体模型を対象にした加振実験結果の再現に取り組んだ。 加振実験でも用いた気象庁神戸海洋気象台で観測された兵庫県南部地震の地震動で解析を進めているが、モデル構築の部分で多くの課題が残されており、次年度も継続して進めてゆく。 さらに、関連する研究として、本研究で対象とする塑像・乾漆像のみならず、銅像などで既に免震装置を用いた事例についても調査を行い、免震装置導入後の問題点の把握を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった「塑像や乾漆像の残存事例調査による残存状況や損傷個所の類型化」については、主な塑像残欠の多くを実見することができ、あとは類型化を行うのみである。また、個別要素法による塑像の地震時挙動の数値解析については、開発者である国土交通総合研究所中川貴文氏や三重大学花里利一教授からアドバイスを受けながら、モデル構築までを終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
塑像や乾漆像の残存事例調査よりこれらの立像は足首部分が弱いことを経験的に明らかにすることができた。今年度は塑像の縮小模型を作成し、三重大学が所有する一軸振動台において実験を行う予定である。なお、模型製作にあたってはスケール効果に留意する予定である。 また、wallstatを用いた数値実験についても、既存の実験データが豊富な乾漆像についてはある程度明らかにすることができたため、塑像縮小模型の実験にあわせてモデル化を行い、実験結果との比較をおこなうことで地震時挙動メカニズムを明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
個別要素法プログラムについて、当初はUDEC(伊藤忠テクノソリューションズ)の購入を予定していたが、交付決定額を大きく上回ったため購入をあきらめるととともに、代替案として無料ソフトウェアであるwallstat(国土交通総合研究所)を使うことにしたため。また、三重大学花里利一教授のアドバイスを頂きながら研究を進めていくうえで、研究室に所属する学生の手伝いもあり謝金支払いを抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
塑像縮小模型を製作するうえで、より実際の挙動に近づけるうえでは骨組み構造をよく再現するとともにスケール効果に留意する必要がある。そこで、模型製作の材料費・製作役務に当初より多くの予算を使用する予定である。
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